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 不幸な行き違い。

不幸な行き違いというものはどこにでもあるもので。今日もそれを実感した。夕暮れ。僕は急いでいた。漏れそうだったからだ。冷や汗をかき秋の風がたいそう寒く感じた。息があがり呼吸が乱れそうだ。間に合うのか。間に合わないのか。何とも言えない下腹の痺れる痛苦の波に翻弄されつつ家路を慎重に急ぐ。信号だ。赤い。停止する。そこには女児がいた。紫のワンピースを着たお嬢さん。単色で紫。そんな子供だ。

当然そんなことはどうでもいい。漏れそうでそれどころではない。信号は青へ。急ごう。前進する。緩やかな坂道をのぼる。はあ。はあ。歩く。そこでこちらを振り返りるやいなや女児は走り出した。うん。危機意識が高い。結構な事だ。スマホを眺めていて後ろを同調してあるく男に気づかない人よりずっといい。まだ小さいのに聡明だ。普段ならゆっくり歩き距離をとるんだ。不安を遠くするために。でも今は漏れそうでそれをしてやれない。本当にすまない。悲しい。ついでに足裏のマメがだいぶ痛んで歩き方がぎこちない。さぞかし不審人物にうつったことだろう。女児は走り出した。時折こちらを振り返りながら。真っ直ぐ大通りを。二度三度と振り返り減速もせず駆けていった。


途中運悪く信号機に捕まり足止めされた女児が追いつかれるのではと不安になったのか後ろを何度も確認する様は遠目に見ても怪奇映画の被害者さながらで、見た目って大事ねと改めて確認した次第です。怖れられながらも頑張って歩いたおかげか、なんとか漏らさずすみました。

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