に
じ。
虹を見た。東の空。雨上がりの夕暮れ。虹は二本。はっきりとうっすら。二つ空に並び浮かんだ。夕暮れの町に。虹を見たのが初めてかのようだ。きっと見ているに違いないが初めての様に感じた。何か良いことがありそうな気がしてくる。そんなことありはしないのに。まじまじと空に掛かった虹を見た。絵に書いた様な虹を振り返り振り返り見た。西に進んだ。
それから幾日かたった。当然何もなく代わり映えしない日々を過ごしている。
○
二十四番影。
普通と言われた影。大人しく沈黙を保った影。和やかな空気にするこれといったところのない影という前評判。
どんでん返しがない事を願う。 沈黙した女。
○
否定。
否定の。拒絶された。渡そうとするものを押し戻す。
自覚は浮かび上がらずに何事もなく時間が過ぎた。
自覚を得るという話はなんだったのか。自覚を得なかった現実を迎えて幾日かして僕は言った。その問いに驚く程単調な返答が発せられた。お前の否定する力が上回った。
以上。 終わり。
それに僕は何も言えなかった。
上回られたので何もおこりませんでした。
浅慮なのか。不測の事態なのか。今までの発言の根拠はなんだったのか。説明は。流れていった。沈黙を阻害せず。ますます静かにするように。しかしすぐに破られる。まだ後二つも影が残っているのだから。自信というものは虚無からでも涌き出てくるのだろう。




