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灯りの点いた家
○○
家の前まで来て思う。
誰かが居る。
玄関に入る瞬間。
扉の鍵を開けて、扉が開き きるまでの間。
家の内側を覗き込むまでの僅かな時間。
部屋の明かりが点いていて、
誰かが、待って居て、そこに居てくれている。
そんな気がした。
○
真っ暗で静かな空間。
誰も居ない。冷たく、時計の秒針だけが音を発てて突き進む。
ぐるぐると同じ様に。
かつては誰かしらが居て喧騒とした家も、とても静かに為った。
遠くで電車の音がする。
椅子の肘置きに寄り掛かる。
ぱきり。
自身か椅子かのどちらかが鳴る。
勤勉な秒針が進む。




