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あ
らしの前に
嵐の前の朝。黒い頭の犬。目を覚ます。雨戸が閉まる。雨音が響く。曇った空模様。風は微速。雨が降っている。
スバラシイ御告げはない。固まった筋肉を痛みと共に伸ばす。痛さは変わらずある。十年二十年変わらない痛みがある。
町は静かだ。遠くで時折緊急車両が音を立てる。
風は弱まり、雨音は絶えた。不穏に感じるのは心配しているからだろうか。嵐の前の明るい。
○
満月。
電話が鳴る。霊媒だ。今日行うそうだ。満月が顔を出した。雨は乾き雲は散り鈴虫が鳴き始めた。延期はない。二十三番影を取り出すのだろう。僕も日付が変わる前に帰る。眠る。影を見ないように。寝ている間に全てが終わっているために。
特別な影といわれた。一時は最後の影ともいわれた。
何も変わりはしないさ。特別なんて縁遠い事。
変わらない朝が来る。お馴染みの目覚めがある。
そう信じてやまない。




