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ぎ
ゃあてい。ぎゃあてい。はらぎゃあてい。
夜。空調は今日も空気を吐き出している。眠りにつくべく灯りを消して寝具に横たわる。風は音を運んでくる。それは感情による口論のような気がしてくる。が帰ってきたのか。男の声が滔々と流れる。壁の向こうから小さくあやふやな意味を掴めない音が聴こえる。疑問が湧く。一人の声しか聴こえない。さらに疑問が湧く。長口舌すぎないか。感情にまかせているとはいえ、そんなにつっかえず滞らずべらべらといつまでも話をできるものなのだろか。息継ぎもせず。
そこでこれは本当の音なのだろうかという疑問がはっきりと認識された。そうするとすぐに音は男の苛立った声から別の音になった。そして何を言っているか今や確りと聞き取れた。それは経文の一節の様に聴こえた。繰り返し繰り返し経文の一節を聴いた。
何かを叩く音や苛立った男のよく聞き取れない話し声に比べたら随分と目出度い感じだと思った。少なくとも悪い意味ではないだろうから。一節の部分を繰り返す半端な感はあったが、最後まで唱えずとも悪くはならないだろう。
気にせず眠りに落ちていった。




