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ま
んなか。
言葉に起こすのを躊躇するのは惜しんでいるのだろうか。明確になる事で離れてしまう。そんなことを何度も経験してきたからだろうか。それでも結局は重しに感じて吐き出してしまうというのに。どれだけなら秘密を抱えたままでいられるだろうか。
刀を引き上げる。
何処へそれをやれば忘れるだろうか。視界の外か。それは頭の上か。あるいは引き上げたものを下げて腰の横か後へやるか。どれもよさそうだ。ここが狭い通路でなければ。
上へ大きく振り上げれば天井が削れ粉が降る。横には棚と棚。それが続く。通路の横幅は肩に触れるか触れないかぎりぎりだ。狭い通路。天井には蛍光灯もある。強く当たれば一大事だ。それは何処か。妥協の点は。
鼻の前。瞳孔と瞳孔の間。
立てる場所はここ。とりあえずの点。しかし実に目障りだ。視界のど真ん中。竹刀競技の面金を思い出す。あれも慣れた。これも慣れるだろう。
ハバキの安い金色がきらきらと光を反射している。
軽い黒い鍔には金の牡丹が塗られている。
刀身の峰も白く光を反射している。
そのうちそのうち。




