こ
え。
夜半。ふと目を覚ました。あるいは寝付いてはいなかったのだ。眠ったと思っても。
空調は働き、音を立て空気を吐き出している。仰向けでそれを聞いている。風の流れ。その高くはない音を。ふと気付いた。低音が在る。風の流れだとばかり思っていたものに別のものが混じっている。そうして気付くとはじめからあったような気もする。途中から混ざったような気もする。左肩の近く。耳の高さ。音がある。低い。途切れない。小さな音がある。
聞こえる。
人の声のような気がしてくる。小さな音が。細々として聞き取れない声の様に感じ始める。嫌でも意識を取られる。耳が働く。しぶしぶ耳を澄ます。音は途切れず、低音域をうろうろと上がり下がりしている。そこから意味を取れそうもない。
意味が分からないが音は続いている。
そこで一つ痙攣をした。
さらに一つ痙攣をした。
眠るべく静かに整えた。
張りを弛めた。
次に気付いた時、もう朝だった。
○
見たか。それを。
見なかったそれを。見ようと思いもしなかった。天井を見て。目蓋を閉じて、目蓋を開けようなんてまったく思いもしなかった。少し位、音の方を見ようかと思いそうなものだが。
見たいような音ではなかった。
そういう事なんだろう。きっと。




