き
ょうも。
平和な日に。声が聞こえてくる。キャア。タスケテエ。ダレカア。タスケテエ。平板で甲高い声が、九官鳥を思わせる。ああ、隣の奥さんは少しおかしくなってしまった。
家にいると聞こえてくる。ダレカキテエ。繰り返し叩く音を伴い叫んでいる。いったい何を叩いているのやら。力強い。連打。元気だな。
○
十九番と二十番、終わり。
影は出て行く。何事もなく。うまい話もなく、損もない。
腕輪は返却されて。今日はいつもと違う道を歩いてみよう。
ひんやりとし、粘った空気を背に張り付けて帰る。
急な坂、新しい石の鳥居、新しい広い急な階段、中頃まで来て土の踊り場。桜。桜。古い石の鳥居。古い狭い急な階段、生い茂った木々は階段を薄暗く覆う。登れば小さなお堂。小さな手水舎は手拭いが風に揺れていた。
手順に従って参拝をすれば、何やら力が抜ける。一息ついたからか、気にせず階段を下る。二つ鳥居を潜れば、背に何やら滑りが引っ付いて感じる。それが続く。とぼとぼと滑りを伸ばしに伸ばして道を帰る。どこまでもどこまでも伸ばして家を目指す。家に真っ直ぐ帰るのはやめてどこかに寄り道しようと何となく思いつつのっぺりと帰る道は久しぶりに見ても変わりなく感じた。
やっぱりあそこは駄目だな。倉庫に寄り、しばらくぐだぐだとしてふと気付いた時、背にはもう何も感じなかった。




