た
かい。
夕暮れ前の横断歩道を通った先には背の高い190センチはあるだろう異国の青年僧が信号待ちをしていた。手足も胴体も長い。少しだけ毛が伸びた坊主頭がよく日に焼けた肌の色をしている。黄色がかった大衣をはおり茶色い鞄を斜めに肩に掛けている。脛がむきだしで靴はスポーツシューズだろうか。靴の印象は薄いサンダルだったか。そうして上から下まで一通り長い青年僧を眺めると視線を青年僧から外し信号機を見つめた。
信号が青になり、むきだしの脛も若々しく青年僧はのっしのっしと歩いて行った。
霊媒は言った。:偽物だ。
長いのは詐欺師だからだと。出稼ぎで来て人のいい日本人を騙すのだと。
背が高いから駄目というのはどうなのだろう。痩せていたが。骨が太く長かった。むしろ立派だと感じた。それが偽物だというなら見事な偽物だろう。
霊媒は言った。:靴が気にくわない。
綺麗過ぎると。さすがにアスファルトを素足では辛いだろう。膝にも足裏にも負担が掛かりすぎる。国に帰って土の道でなら素足で歩いているさ。
他所の国の人が色々と歩いているご時世だ。他所のお坊さんが歩いていてもそれほど不思議でもないだろうに。
霊媒は言った。:お前は優しいからな。
諦めを滲ませた言葉。そのあとにはきっとこう続けたかったのだろう。だから簡単に騙される。
○




