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き
えて。
霊媒の期待はいかなる現実に打ちのめされようとも挫けず腐らず燦然と輝く天体のようだ。その頭骨の内でどのように帳尻を合わせているのか不思議でならない。
例えば、姿を隠す。あるいは、魂を体外に離脱させる。当然そんなことは僕には出来ないというのに。その事を素直に申告もしているのに。何故だか勝手な期待をこちらに抱いている。
当たり前ではあるが僕は小指の先ほども消えない隠れない。勿論体から出て行くなんてとんでもない。体という生命の家から出て行こうなんて試したこともない。そもそもどうやって、だ。試行さえできない。僕は説明をした。しかし意見が変わることはなく、希望はますます高まるばかりだ。仕方なく付け加えた。駄目だったしてもあまりがっかりしないでくださいよ。いつもいつも驚くほど落胆されるのは毎度のことながらこちらも辛いですからね。
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だから言ったじゃないとは言ってしまえば無力の表明ですからね。まったく話を聞いてもらえませんでしたという。
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