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 ○○


 夕暮れに雲。

夕日は雲に隠れ、光が雲の向こうから洩れるている。群青は滲む。風は涼しい。雲は高く広々としている。初夏の様だ。

梅雨入りと聞いたが、ちっともそんなことを感じさせない天候だ。梅雨入りするとはなんだったのか。乾いた風が心地好い。

肘に軽い痺れを感じながら歩く。


 ○


 進展なし。

相も変わらず進展はない。乾いた咳に押されるように逃げ出す。倉庫へ。居場所といえばここくらいだ。

霊媒の話を思い出す。逃避か。そうなのか。そうだろう。耳鳴りが響く。外を靴音が通過。


 ○


 今日も進展なし。

親父は今日から入院。小虫が飛んでいる。

関わりのないことを霊媒が言う。:鎌が帰ってくるそうだよ。

教えてくれるよ妖術を。


その鎌というのは小さい鎌で柄は拳一つ少々しかない。刃も似たようなものだ。小さい、実用というより飾りじみた物だ。刃部に赤いぎらつきがあった。散りばめられていたそれは、一見して錆びかと思ったが錆びというには光沢がありラメの様に光を反射していた。

感じとしてはアジアの土産物。混じり物。付属品は左右に鉄鎖が捩じ込まれた木製の厚い円だ。木部はやや飴色。鉄鎖は錆び錆びだ。黒い。鎌を掛ける為か上部と中部と下部は彫り抜かれ空洞だ。やや大きな平たいどら焼きを立て、上から下へぶち抜いた感じだ。そこへ鎌を掛ける。だった気がする。何年も前であやふやだ。どら焼きよりクッキーの方が近いか。身近な厚い円がなかなか思い付かない。

まあ、それがあるときなくなった。特に愛着もなく、それでしまいだった。刃の散りばめられた赤いぎらつきは少し好きだったがそれだけだ。役にはたたなかった。懐かしい話だ。

妖術は断った。妖しい術だからだ。

今更戻って来られても置き場所もない。


霊媒は二言目には美女になると言うが騙されているのだろう。でなければ騙そうとしているのだろう。あるいはその両方なのかもしれない。器物が人に変わる話を好む人だ。さぞかし担ぎやすいだろう。

大事ですね質量保存の法則。


 ○


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