373/493
あ
○○
あ
倉庫の中が蒸してきた。湿気と室温がじわりじわりと上がります。外より涼しい期間は後どれだけか。羽虫が飛び。前腕に着地。直ぐに離陸。影はすくすくと育ち、食事を要請する。痙攣しては痺れ、めぼしい進展もないので、言葉はなかなか出ない。文字に起こしては消える。
○
十七番影は双子か、さもなくば二面の一人。
その顔は後ろと前にあるという。そう言ったにもかかわらず次の日には顔は二つとも前にあるという。また別の日には顔は左右にあるという。その次の日には別れて二人になるやもしれぬという。情報は錯綜し入れ替わり立ち代わる。それは蛙の顔という。それは両性という。
○
掲げた。
よい。とばかりに床方向へ押し押して、反発させて跳ね上げる。額の前。柄。掲げたままに柄を額へ軽く押し押して、前へ進み出る。ずんずん進み出る。行き詰まる。柄を額へ押し押して、出る足を留めて後ろへ出る。前進とは逆の足から。進み出た分だけ後進。掲げたままに。
○




