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あ
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四角い車輪。
徐々に磨耗し、その角を一つ増やした。
角をまた一つ、更に一つと、少しずつ削れ、一つづつ増やした。続けた。日に日に円に近付く。分水領。そうして転がり出すかつて四角かった車輪。歪な車輪。倒れるまでは幾ばくか。
慣習が育み。惰性が転がし、事実によって倒される。
故意に見逃されていた悪。つまらない小さな集合。
とるに足りない有象無象。ありふれた、耐えられた。
これからは許されない事。放っては置けない大事。
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公道を眺める。自動車が進み列を成している。
丸い車輪は高速で回転している。
そうして眺めていると駐車場かあるいは茂みから、そろそろと猫が進み出てきた。猫は身を伏せつつ慎重に進み出てきた。歩道を横切り、公道へ向かって。交通量は多い。僕はただそれを見ていた。すると、歩道の中頃でこちらに気付いたのか猫もこちらを見た。猫は驚き、一瞬立ち止まった。が直ぐに引き返し飛ぶ様に戻って行った。僕は猫が出てきた辺りへ近付く。覗き込んだ。猫はいなかった。駐車場は広々としていた。茂みは青々として元気だ。あらためて見ても猫はいなかった。
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