356/493
あ
○○
うとうと 去っていった。
ふと見ると、丸々とした大きな男。手には切り詰めたのか短い横並びの二本の銃身、木製の握り。そして二つの黒い穴がこちらを向いている。
何も言わず、動かず、静かだ。黒い穴は。目蓋を閉じた。
かちり。音がしただろうか。
少しして黒い穴は離れた。
悲しそうに男が言う。:電池切れだ。
また言う。:まだ何もしていない。
大層悲しそうだ。僕は形ばかりの慰めを言った。:もう、一回したじゃないか。
数度、肩を軽く叩き促した。そして言った。:みんなと仲良くな。
男は項垂れ、少し涙目になりながら窓から出ていった。二階の窓から。
○
子供が覚えていいのは子供の様な理想だけ。
うつらうつらと横になって頭を流れる情報。そこに言葉が差し込まれる。冷えた言葉。突き放した言葉。唐突な言葉。
目が急速に冴える。
その通りだと考える。僕の考えだろうか。それともどこかで見たか聞いたのだろうか。僕は、子供はこうあれかしと考えた事があっただろうか。何となく思う事はあっても制限にまで言及していただろうか。気持ちの良い微睡みは散り散りになっていた。
○




