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あ
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底冷えする春の夜に
痙攣をした。痙攣を初めて六年と少々がたった。親指だ。一巡したのだ。目蓋の工夫から次は親指。
ああまたか。あと何巡りすれば、影以外の何かを見出だすのか。
寒くとも春先。暖かくなりつつある。活発な血行と共に存在を訴える手足。外気温と工夫は連動しがちだ。寒さが締めていたものは緩み始める。そう親指とか。寒暖は急速に移ろい刺激し悩ませる。手足の工夫はこれでよいのか。
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夢。
夢だ。人がいる。血だ。掠れている。怯えと諦め。鬱積が座屈している。
道路には血だ。凹みには血が残っている。循環する公共機関には腕か脚がぶら下がって密集している。胴体も探せば有るのだろうか。
擦っても擦ってもそれでもなお残った血痕が街を彩る。どこもかしこも錆びてしまった様だ。あるいは錆びているだけなのか。道路も。店舗も。あらゆる隙間は。
点在する人。人。声が響する限界を見極めるかの様にぎこちなく離れている。それは悲鳴を聞き逃さぬ様にだろうか。それは助ける為だろうか。それは逃げ出す為だろうか。
信じているのだろうか、何かが帰ってくると。
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