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あ
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お前らに帰る場所なんてないんだ。
手付金込みでの譲渡。約束の不履行でも、泣き寝入りするしかない。その前提を飲んで頼んだ。それを後から撤回は出来ない。それを他者が混ぜっ返すなんて許せるはずもない。それが当時交渉の具にすぎなかった影ならなおさらだ。
勝手にこちらを主人呼ばわりし出戻ろうとするとは。
珍しいからといって必ずしも好ましいとは限らないな。
主など存在せず、部下もない。行くべき理想郷を欲っさず、帰りたい故郷もない。親なく、子なく、体もない。それを昔、僕が欲しかったよ。
そうなれるモノがしがらみを振りかざし、生臭く振る舞う様は悲しい。既に完成したものが瓦解する様は話だけでも辛い。
不完全なものは完成を求める。完成されたものは崩壊し、不完全を目指す。それが今ではないというだけで、そこがここではないというだけで。ぐるぐるとかき混ぜられきりがない。
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