あの眺め
○○
いつか
僕にお詫びの品を贈呈しようと為った。
結果として約束は果たされず、
申し訳ない、と。
○
不思議な帽子。
力有る外套。
手に入る杖。
幸せへの乗車券。
ねえ様方は譲って欲しがった。
それに僕は、僕への詫びの品だからと断った。
僕が受け取るのが謝罪を受け入れる事に成るだろうと考えていた。
受け入れる気でいた。
それが良くないものでも。
僕は和解をしたかった。
不毛な言い争いを終えて新しい展開を始めたかった。
いがみ合う事を止めて譲歩し、
お互いに先を目指す理性が有るのだと証明したかった。
率先して耐え許し次に進みたかった。
何日間か経った。
約束の日が近付きつつあった。
様々な方々が譲って欲しがって話を持って来た。
僕は全てお断りをした。
そんな事が続いて、つい、
こんなに皆欲しがるならいっそ、
これくらいならいっそ、
幾つか譲ってあげた方が円満に物事が進むのでは、と考えてしまった。
断るのに辟易していた。
全てを欲して妨害を誘発し全て取り零すくらいなら、譲歩しよう。
謝罪とお詫びを受け入れた様に。
僕は幸せへの乗車券以外をある猫に譲る事にした。
当日。
乗り場に猫が来て、言ったそうだ。
僕から譲り受けた。
それを聞いて、
僕に謝罪とお詫びを渡したかった方は、
譲り渡したそうだ。
全てを。
一つ残らず。
○
そうして、僕は謝罪とお詫びを受け取る機会を逃した。
それ以来幸せにはとんと縁が無い。