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冬蝉と木蛙
○○
血をたぎらせる焼け石。
血を沈静させる冷や水。
血を痺れさせる生け垣。
拳。
共通の基盤というモノ。
怠け者の夢。
完全な食品。
網羅された一品。
それさえ有れば。
たわごと。
○
弱者のよるべ。
よるべなきモノに与え、それが、よるべに成りうるのか。
飢えた腹でそれに耐えられるのか。
拒絶し反って苦しまないだろうか。
▽
蝉の叫喚が聴こえる。
夜の頭骨に響く。
冬の季節に。
△
木彫りの蛙。
その背には段差が有る。
階段か歯車か背鰭か。
飴色の蛙。
蝉の叫喚の中、木蛙の声が混じる。
木蛙を運び練り歩く足。
木蛙の背に有る段差を木棒で撫でる手。
頭頂から腰まで。
連続して段差に当たる木棒。
空洞か。
軽やかに響く。
けろろ。
何度も。
けろろ。
○




