表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
295/493


 ○○


 浮かれた歌声が足音と共に近付く。遠ざかる。

九番は躾が厳しくてめそめそと泣いているそうだ。年の瀬に嫌な話を吹き込まれた。誰に頼まれたという訳でもないだろうに。文字にして気休め。育成の技術もないのに何で手を挙げたのやら。憂鬱だ。子供の泣き声を遠ざけたら、遠くで子供が泣いている話を吹き込まれる。近々移送されるそうだが。その先でも幸福はおぼつかないモノなんだろうか。


 ○


 石の行方。

へそを曲げて石の如く。硬く、凝固し、黙し、糾弾する。し続ける。


九番は上手くやったもんだ。

当初、十番が出るまで自由があるはずだった。が病弱故に眠ったまま早々に連れられて、目覚めてみれば知らぬ所。厳しい躾。辛い。とうとう堪えかねて約束が違うと強硬に反発した。過ぎた事を掘り返した九番。見事な頑固さ、みな手に負いかねてとうとう処遇は宙ぶらりんに。

十番と離したのも不味かったな。ますます意固地に。


納品した以上は裁量は向こうもち。どうするかも向こうの勝手。


九番の名付けをしても良いか聞かれる。:もうどうこういう立場でもない。当人と持ち主、よく相談し当事者で決めたらいい。


扱う器量がないなら手放したらいい。僕のように。


石になったんなら持ち運びも楽だろうに。これは言うと怒られるか。


 ○


 親父が洗濯物に虫が付いていると言い。

虫を殺した。可哀想だが仕方がない。呟いて。

寒いのに、虫か。夜に取り込んだ洗濯物に。


僕は倉庫へ向かった。虫の死から遠ざかる為に。

虫の死は嫌なものだ。逃がしてやれば良いものを。

と思わずにはいられない。羽音が耳に残る。 じわじわと途切れ途切れになる。短く。小さくて。そして潰れる。


窓を開けてやったらどうか。聞き流された言葉は平凡ね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ