あ
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干し首の映像を眺める。一つ二つ三つ。長い髪。突き出た口唇。唇の縫われた箇所は三つ。左右に一つづつ。中央に一つ。肌はタンニンのせいか映像の加工か、黒く鈍く光を返していた。
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神社の手水舎。石製の龍ノ口から水が僅かに流れ出ている。それが干し首に見える。口を濯ぐ。手を洗う。残った水で柄杓も洗う。本殿へ。狛犬が今日も凛々しく睨みを効かす。干し首に見える。干し首に眼球はなかった。眼球もつ干し首。目蓋を閉じ縫い合わされ。参拝を恙無く。痙攣は三つ編みを振って。耳の裏。頭頂。耳の裏。うなじ。うなじは上方向へ。
あるいは踏むほど長い自身の頭髪をしっかり踏み締め、首と頭で引き抜く様。
僕に三つ編みを。髪の長さを。錯覚だったするか。
髪の。
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干し首の静けさをみならい静かに。
喪服の女が出ては尋ねる。何故手放すのか。
何故か。何故も何もない。僕は言った。:あんたらは僕を置いて行くだろう。
目蓋を大きく開き、あからさまに驚いてみせた女。
そのまま沈黙した。僕を置いて行った。僕は置いて行かれた。
言った通りだ。
気をつかわれた予言。外さぬ様に慎重かつ迅速に実行された優しさ。
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まじないは女の顔をしている。
僕が女ではないからそう見えるだけか。誰もがそう錯覚するか。まばたきの内に入れ替わるか。僕が男だからか。どちらでもないのか。どちらでもいいのか。
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