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 ○○


 サンダルを履き潰した。

じわじわと鼻緒が伸び、千切れた。出先で。

左足は裸足に。左手にはくたびれたサンダルの残骸。公道の粗さが裸足に響く。何度目か。学習しない有り様。もつと思っていた。明日買いに行くはずだった。裸足に優しくない道を歩く。信号機横のしましま。白い所は気持ち滑らか。

百貨店に入る。店員さんのやや困惑した挨拶。きっと気のせい。ぺたぺち歩く。靴屋へ。左手にぼろぼろのサンダルを持ち、右手に傘を持つ。帽子をかぶり、上下のジャージ。不審者感。目を逸らす。サンダルを購入した。履いて帰る。店員さんが棄てときましょうかと提案。気遣いが、痛み入る。断って持ち帰った。この靴屋に来るときに半裸足なのはこれで三連続か。ふと考える。今度は余裕を持って買いにこよう。裸足にならずに済むように。


 ○


 夢と現実の区別がつかない瞬間にあっても、現実のように夢に在るのなら、どっちでもいいと気付いた時。

くまんばちが首の隙間で羽ばたいた。

飛び起きて、手で払い、見回した。

何もなく、ただ、後頭に振動があった。

残響がこだました。後頭が期せずして振るえる時。


正直に話した。からからに乾いた口腔の内で一所懸命動かして。喉の痛みを堪えて。たどたどしく舌を動かして。訴えた。窓から来たモノに。見えないんです。何も。見えないんです。本当に。どうしても。  返事を聞いたが忘れた。


ぼんやり眺めた。赤い肌の男が、不機嫌そうに独り言を発する。:人間はその魂に比べて貧相過ぎる。相応しく在るべきだ。

また 別の、赤い髪の男が気遣わしげに赤い肌の男へ慰めか翻意を促すためにか言葉を掛けた。:人間はそう捨てたもんじゃないよ。

しばらく通り一辺倒な話が続いた。が、環境音と異国の言語と鳥の囀りをないまぜにしたようにしか内容を理解できなかった。僕の聞き取り能力は高くない。つまり何も残らなかった。


赤い髪の男の話は終わった。赤い肌の男は苛立たしげにちろりと視線を床に投げて言った。:人間は相応しく在るべきだ。もっとそれらしく。



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