白昼
○○
白い猫が蝶々にじゃれて。
宝を拾うと言われ、僕は答えた。猫の死骸なら拾った。
仮にそれが宝だとしても、もう環境所の人が持って行ってしまった。灰になったろう。
白い猫が蝶々にじゃれて、楽しげに庭にいたとき。
黒い猫が羽虫に集られて、空っぽで公道にいたとき。
宝と言われたモノは、死骸と言われるモノだ。
見間違いで瀕死だったとしても、灰になってしまえばもう同じ。
蘇生する事も灰ではできないだろう。
○
下唇、上唇。
下唇で前へ押せば、背を押される。背を押され、しかし留まれば、腰を押される。押される腰は踵へ繋げる。 後ろから。
上唇が下へ押せば、胸を押される。胸を押され、しかし跳ねれば、腰は引かれる。引かれる腰は踵から繋げる。 後ろへ。
○
口輪筋。
頬の痺れは泣いた様に痺れた。頬の痛みは笑った様に痛んだ。
口輪筋はもごもご。上は押さえ下は進もうともだえる。
口輪筋はにやにや。上は押し上げ下は張り付きえくぼ。
後頭と額が引き上げる。頬は目頭や目尻や眉頭や眉尻と共に吊られる。
右主体、右の口の端を耳の下へ引き付け、左の眉尻を耳の上へ引き付ける。左右に分ける顔の筋。反発して鼻に寄る。口の端を顎先へ眉頭を額の上へ、きゅうと寄せる。絞って寄せる。僅かに寄せる痙攣の内。そうして頬へ誘導する。
頬の痺れ、頬の肉を、
口輪筋を絞って寄せる鼻へ。
絞って寄せてさらに絞る。反発し頬は離れ、痺れ増す。




