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眠る理想


 ○○


 すやすや眠る十代の理想像。

髪は金。顔は小さく、目鼻立ちはくっきり。体薄く手足長く云々。

などと他者から聞かされて片頬がひきつる。かってに理想像などとうたわれてはかなわない。反論を試みる。理想像などというのは変わるもの。時たてば変わりゆくものでは。それはいつかの理想像かもしれないが、今のではない。それに理想像を生で見れば触発されて掲げる理想像も変化するのでは。生きているなら。よしよしこれでどうか。訝しげな顔と声は聞かなかった事にして話を終えた。


 ○


 そういえばと思い出すのに二時間ほどか。

昔の好みが掘り起こされるとは恐ろしい。


確認をしたのか。顔が女性なだけで体は男性かもしれないぞと言ったら服を着て産まれるわけがないだろうと言われる。

霊媒に常識を言われるとは。

その常識を別の所でも発揮してくれよ。


 ○


 やはり見なくて正解だったな。

十代の頃の理想像なんて目の毒だ。



 ○


 隣のひさしが風で剥がれうちの看板に接触。わびられる。

呼び声に誘われてはあい表に出てみれば、お詫びを入れられる。いやあすいません。汗をふきふき。初めて見た顔だな。前日は風が強かったからな。まあはい。はい。ふにゃふにゃ合わせて引き下がる。

うちも自販機のごみ箱の蓋がどこかへ行ってしまった。

植木が抜けて傾いてた。おにぎり。


 ○


 今の理想像は。

今の理想像なんてあるのだろうか。

無形無色。無音無香。

形が無いので形で表現しようと思う。

色が無いので色で表現しようと思う。

音が無いので音で表現しようと思う。

香が無いので香で表現しようと思う。

その感触を無いもので表す。

理想像を表すは不在。

不在なき理想はまったく退屈だ。

役割を既に終えている。

さもとらけのにけを。


 ○


 寝ている。

起こすのには反対だ。

協力しない。

寝ている理想像を起こすなんて。


起こしたら理想像はなんて言うだろう。ふと考える。直ぐに思い付く。なんでそっとしておいてくれなかったんだ。ほうっておいてくれさえすればよかった。どうして。


あんまり寝さすのも考えものだな。それはそれで恨まれそうだ。起こした時に。

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