六年は七秒に纏まる
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かもしれないで恐ろしいんだ。かもしれないで楽しんでもいいじゃないか。たまには。
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僕は痩せ細る。
残るのは自身の骨と皮だ。そうして産み出すのか、産み出した結果そうなるのかはまだ分からないが、産み出した僕には骨と皮が印象深い細い肉体が残るのだ。
人魚を頭蓋腔から放り出す。下半身が魚ではない人魚。もちろん上半身も魚ではない。人でしかない人魚。
それを山へ持って行けば雪女に成り、海へ持って行けば人魚に成るそうだ。夏は暑いので雪女には成らないともいう。
食えば不老長生の功が有るともいう。
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門番をしないか。
門番をしないかという話があった。楽しいという。人が来れば、その人を通す。それだけ。それのどこが楽しいのか全く共感できない話だ。そんなに楽しいなら前任者はどうしたと聞いたら、飽きて辞めたという。ほらちっとも楽しくない。
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腕の張り。
右主体。回して上げる。右から上げる。反時計回り。上に来て、目前で、小さく回る反時計回り。手前から奥へ奥から手前へ一回り反時計回り。くるくる二回まわりつつ落ちる。縮れ一回 回り落ちる。縮れ一回 回り落ちて留まる。痙攣起こる。そのまま声帯へ。
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○声帯始点に痙攣起こる。小さく起こる。腕の張りより小さく起こる。腕の起こした痙攣に合流する。
踵を二度打つ。踵で二度揺する。痙攣起こる。腕の張りより下腹に響く。
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○声帯始点に痙攣起こる。小さく起こる。声帯二度閉じ張るより小さく起こる。既に在る痙攣に合流する。
踵を上げる。仰け反る。踵を下ろす。仰け反る。痙攣起こる。下腹に響く。小さく響く。踵で二度打つより小さく響く。
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開いて 閉じて 痙攣。 呼気、吸気を撫で振動する声帯。閉じきらず、流れに差す。踵を揺する。声帯で撫でる。踵を揺する。
小さく小さく小さく。七秒懸かった。腕、声帯、踵、声帯、踵。
滑らかに分からぬ様に。六年の工夫も七秒に纏まる。発生と継続。後頭の随意。 陰も形も無い。
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この流れが重要だ。みるみる小さくなる工程。回る腕の張り。声帯の二度やや閉じる際の張り。声帯の大きく開いてやや閉じる張り。合流され小さくなる痙攣。
数秒から十数秒か それぐらいなら停止しても即小さくしたとこから再開できる。痙攣の残響を感じる間。声帯を開いて空気を通し声帯の張りを触れさせる。踵を上げる。爪先に重心を移す。踵を下ろす。踵に重心を移す。こうして歩く。片足を上げる。支える片足の重心を爪先へ。上げた片足を前へ。支えている片足の重心を踵へ。痙攣と共に。
体は進む。




