あ
○○
狛犬に朱が入っている。何週間か前からか。塗り直したか。
口唇、耳内、爪の生え際、目の縁。
○
巻き上げる斜腹の筋。
吐き出し下ろす斜腹の筋。
右が上がれば左は下がり。右が下がれば左は上がる。
右、左、両方。左、右、両方。肋骨にみしりと痛みが走って蔓延る。
○
予定日は一月のびた。
ゼリーを食べたいとの仰せに反発した。関係は冷えた。
八月の満月での取り出しは止めになった。
霊媒は、お叱りをうけたそうな。伝え方が悪い と。
何かというと伝え方が悪い。一言二言の連絡に伝え方も何も有るのだろうか。ゼリーが食べたい、それだけに。当然有るべきの、では望ましい有るべき伝え方とは何かという話は聞いたことがない。ただ叱責のみ。
失敗は自明という他ない。
たるんでいたのだ霊媒は。
○
靴下一枚履くか、髪の長さ数㎝伸ばすか、夜間の食事の有無。それらに対する指図に逐一反発してきた。
○
育んだ物は皆手放した。今回だけは違うなどと、どうして思ったのか。僕の角がとれて丸くなったなどとよくも錯覚したものだ。
次に出るのが美女だから手心を加えるというのはない。
○
軒先を貸して母屋を取られるのは主人。
僕は召し使いではない。僕は主人ではない。あなたも主人ではない。
乗り合わせた他者。出身を同じくしても赤の他人。
主人と言われても気分が悪い。かしずかれるのもかしずくのも御免だ。勝手に出来て勝手に大きく成って勝手に関係を主張する。
○
締めるか。そう考えると気分が良くなる。訳のわからん存在には関わらないのが一番で、切り放すのが二番か。
○
たるんでいた霊媒は向こうの方がよきにはからえで全くどうしようもないという事をすっかり忘れていて。
僕がそれにうんざりしていて、向こうの責任を取らない粗雑さを忘れず、反発する機会をうかがっている。
という事を念頭に置くべきだったのだ。
争い。争い。争い。だ。命令者と伝達者と実行者の。
他の口は霊媒のために動かない。それぞれの思惑。それぞれの予定日。皺寄せは間抜けの所へ。