あ
○○
細長い蚯蚓を摘まんで草地へ放す。
指と指の間にて動く動く。力強く逃れようともがく。日影の草地へ向かうとも知らず。アスファルトよりはましだろう。熱された固くされた石の道より涼しいだろう。きっとそうだろう。放り出す。
蛾。
倉庫から帰宅し敷地へ入ろう、と足を出そうとしたそこには蛾。うわあ、ひらりと、飛び越える。危うく踏む所だった。見慣れぬ蛾。前後逆に羽が付いている。もそもそと留まる。背に小さい羽がもう一対ある。
重なっているのか。茶色の胴体に黄色の羽。羽には黒い斑もある。
踏んでは事だ。箒と塵取りを使う。先ずは塵取りでそろそろと押す。塵取りにのりたまえ。失敗。ひっくり返りもがく。箒を使う。毛先を蛾の足へ差し出す。成功。紫陽花へ。茎へ。移し変える。もそもそと移動する蛾。よし帰宅だ。室内へ。
食事を終えて出掛ける倉庫へ。紫陽花に蛾はもういなかった。
○
金髪の女は黒髪になり金色の頭をした虫になり女と男になり双子になり姫と従者になり太陽と黒点になった。
見えやしない。そんな事は。今までそうだった。自信満々に断言し結局見えやしない。
○
痙攣は。
腕を掲げる。掲げて打つ。腕で打つ上へ打つ。肩で打つ後ろへ打つ。
猫を持ち上げ持ち直す。膝へ乗せる。透明な猫。もういない猫。
足指を掲げる。掲げて打つ。指先で打つ上へ打つ。踵で打つ下へ打つ。
後頭の筋で吊り上げる。留まりたがる痙攣する肉体を吊り引く。
吊り上げて引いて前進。後頭の筋肉が引く。痙攣と痺れを蓄えた肉体を自身を。




