あ
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鯉口を割った。鞘尻を軽くぶつけた。割れたのは、刀の峰が触れる部位だ。鞘引きで当ててしまった。セロハンテープを巻いて補修する。
締まりも駄目だ。すっかり緩くなっている。ハバキにまた巻くか、どうするのか先伸ばしにしている。無限に巻き続けるのを恐れている。
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虚偽を積む。
筋肉へ弱く小さく施す為に。誠実といえるのか。これは。
硬貨を立たす。振るえながら。不向きに決まっている。振動はこの作業では邪魔者。出来るものか。ゆらゆらと行ったり来たり、裏へ表へ傾く。徐々に傾きを小さく。そして、立った。痙攣も、不向きが有るのだと実証しようとして失敗した。ああやっぱりはそっと仕舞った。倒れぬように。日本国十円硬貨は静かに立った。
もう一枚。もう一枚。そして、三枚たった。
慣れか。怖いものだ。不向きも向きも平準か。
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緊張をみなぎらせた硬貨は何かしらの振動を受けたのだろう、ぱたり倒れた。横たわる二枚。一枚だけ残して。立ち竦む一枚。
ついさっきの事だが、その一枚をどうしたか思い出せない。
三枚の硬貨は緩やかに三角を象るようにまとめられて、横たわっている。
横たえたか、倒れたか。どちらだったか。
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