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あ
○○
老人の湿った咳より脆い。
近付く声。幼子の湿った咳。通り過ぎる声。幼子の湿った咳。大人達の談笑。絡んだ咳。和やかな一幕。二度三度と断続して 幼子の咳。無関心に流れて行く音。同じ時 同じ通りに ちぐはぐな印象が 一緒くたに ゆるゆると通った。
○
赤い目覚まし 青い目覚まし。
左赤 右青。
赤六 青二。
棚に有る商品 赤と青 数の差は歴然。やはり青か。手を伸ばす。
いや しかし。 赤か。
一考する。夜明け前の薄暗い 群青の空間に 映えるのは 赤なんじゃないか。店頭の明かりの下では断然 青が好みだが 使用される状況下では 赤。
悩ましい。確認出来ない思い付きが 考えを揺さぶる。
結局 赤を買った。 799円。
○
仲良くしようとした。
最初の十年は理解しようとした。 出来なかった。予測と願望の区別がついていなかったから。
次の十年は尊重しようとした。 出来なかった。事実と失敗を認めようとしなかったから。
次の十年は黙認しようとした。 出来なかった。それまでの二十年がその都度 思い出されたから。
次の十年はもう来ないだろう。
○




