表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
244/493



 ○○


 腿裏が痛む。尻が痛む。ぎこちなく歩く。

腰を落とし 膝を屈曲させ 狙った部位に効かせる。


かつては 腿の前が痛かった。上体が前屈し 後へ行こうとするのを

膝と脛腿の前で吊り上げて留めていた。後頭が抜け 痙攣が無く ふらついて固着し 指で押されれば崩れた。


同じ形 同じ志 同じ以上の熱意。それでも空転していた。

後頭の伸縮と滑らかな痙攣 左右非対称の小さい動が作る左右対称の形。それらが何も無かった。何一つ。


上辺にすがり付いていた。奇跡を欲していた。肉体が変わり 行いが輝く時が来るのを無根拠に待っていた。あるいは先導者の到来を。善良な自分に訪れる幸運を。

愚かな妄想にすがって。


あまりにちっぽけな 些細な仕組み の抜けが全てを台無しにしていた。


公然の秘密だった。時と共に忘れられるだろう ありふれた 指事語。


 ○


 間違いだらけだった。

僕はちっとも善良ではなかった。 ただぼんやりとして流れていた。

行いの変質が肉体を変ずる。肉体が行いを促す。反応が反応を 反応がまた反応を 入れ換わり立ち替わり結果から結果へ 循環するものを逆に見て こうであれと 固定しようと乖離していた。


無上の先導者など僕には無用だった。もう必要な事を必要なだけ 知っていた。普通の 良い所も悪い所も有る 指導者に恵まれて 教えて貰っていた 殆ど答えを。 だった。 知っていた。


とっくに僕は幸運を得ていた ずっと。知っている事を いつ理解してもおかしくない状況に 常に居た。

既に充分 教えも 課題も 明白で 幸運だった。 とっくに。


ただ自覚が無かった。既に有り 解けば良いのに 気付かずに。

欲しがって得ては解かずに欲しがった。切っ掛けは溜まり 取っ掛かりは満ち 今か今かと待ちわびた が 解は無かった。 それだけは無かった 一つも。それでもしなかった 解く事を。 していなかった。


肩の上の幸運を 知らず 何処か遠くを ぼんやり思っていた。


 ○


 ああ 33歳だ。

誕生日を迎えていた。

動画を漁っていたら 日付が目に付いた。

ああ そういえば そうだ 今日だ 一つ歳を取った。

何かが違えば  老け込んだ赤子ではない 何者かに成れたのだろうか。

それとも 結局は満ち足りたい だけの虫か。



 三度忘れた。

前日に明日だ。昼頃に今日だ 夕暮れにそういえば。

眠って忘れ 歩いて忘れ 文字を勘案して忘れた。

ふと思い出し 6日の文字を見て思い出し 走って思い出す。


 半額のパック寿司を貰う。


 歩く ほんの少し泣く 眼球が余分に湿る 目蓋を閉じる 鼻から垂れる。


 ○




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ