あ
○○
腿裏が痛む。尻が痛む。ぎこちなく歩く。
腰を落とし 膝を屈曲させ 狙った部位に効かせる。
かつては 腿の前が痛かった。上体が前屈し 後へ行こうとするのを
膝と脛腿の前で吊り上げて留めていた。後頭が抜け 痙攣が無く ふらついて固着し 指で押されれば崩れた。
同じ形 同じ志 同じ以上の熱意。それでも空転していた。
後頭の伸縮と滑らかな痙攣 左右非対称の小さい動が作る左右対称の形。それらが何も無かった。何一つ。
上辺にすがり付いていた。奇跡を欲していた。肉体が変わり 行いが輝く時が来るのを無根拠に待っていた。あるいは先導者の到来を。善良な自分に訪れる幸運を。
愚かな妄想にすがって。
あまりにちっぽけな 些細な仕組み の抜けが全てを台無しにしていた。
公然の秘密だった。時と共に忘れられるだろう ありふれた 指事語。
○
間違いだらけだった。
僕はちっとも善良ではなかった。 ただぼんやりとして流れていた。
行いの変質が肉体を変ずる。肉体が行いを促す。反応が反応を 反応がまた反応を 入れ換わり立ち替わり結果から結果へ 循環するものを逆に見て こうであれと 固定しようと乖離していた。
無上の先導者など僕には無用だった。もう必要な事を必要なだけ 知っていた。普通の 良い所も悪い所も有る 指導者に恵まれて 教えて貰っていた 殆ど答えを。 だった。 知っていた。
とっくに僕は幸運を得ていた ずっと。知っている事を いつ理解してもおかしくない状況に 常に居た。
既に充分 教えも 課題も 明白で 幸運だった。 とっくに。
ただ自覚が無かった。既に有り 解けば良いのに 気付かずに。
欲しがって得ては解かずに欲しがった。切っ掛けは溜まり 取っ掛かりは満ち 今か今かと待ちわびた が 解は無かった。 それだけは無かった 一つも。それでもしなかった 解く事を。 していなかった。
肩の上の幸運を 知らず 何処か遠くを ぼんやり思っていた。
○
ああ 33歳だ。
誕生日を迎えていた。
動画を漁っていたら 日付が目に付いた。
ああ そういえば そうだ 今日だ 一つ歳を取った。
何かが違えば 老け込んだ赤子ではない 何者かに成れたのだろうか。
それとも 結局は満ち足りたい だけの虫か。
三度忘れた。
前日に明日だ。昼頃に今日だ 夕暮れにそういえば。
眠って忘れ 歩いて忘れ 文字を勘案して忘れた。
ふと思い出し 6日の文字を見て思い出し 走って思い出す。
半額のパック寿司を貰う。
歩く ほんの少し泣く 眼球が余分に湿る 目蓋を閉じる 鼻から垂れる。
○




