夢枕
○○
立ち現れる少年。
霧中の最中。
神秘の顕現。
おお
なにくれと思う間もなく自然、
右手を差し出す。
○
彼あるいは彼女は、
時計台の人形。
時を告げる人形だ。
夢告の人形。
可憐な。
ただ自律して、
何も変わりはしない。
内部の機構に従うのみ。
○
偶々か
僕の後に続いて
上げられる人形の右手。
触れ合う右手と右手。
友情は尊いな。
利潤の脂。
潤滑者の躍如。
火種を恐れる。
○
軽い。
手触りから感じる軽さ。
容易い。
後は規定された流れ作業。
□
接触した右手から体重を瞬時に伝える。
方向は上から下へ。
瞬時の重量感は相手の背筋にて反射。
そこで掛けた体重を瞬時に遮断 相手の反射に合わせ、
ふわりと除ける。
急激 からの急転な
落差が硬直と随伴を相手に誘発させる。
従わせる。
働きだした相手の背筋を推進力に変換。
背筋の正当な反射。
それを受け止める重さは、
既に逃げ出し ぶつけようもない。
その余剰にて水平移動させる。
歩かせる。
立ち位置が入れ替わる彼我。
安心して欲しい 向かい合った僕たちは今 同じ方向を向いている。
相手の背方を取った。
勢いを殺さず 回転運動に入る。
すぐに遠心力が 仲を引き裂こうと働き始める。
そこで下降する螺旋に入る。
離れ離れになる前に安住せねば為らない。
一回二回で 床に近付き 軟着陸。
成功だ。
○
脇腹を擽る。
肋骨の下から二番位が弱点か。
かつて僕もやられたが、
辛いんだ笑い続けるのは。
擽る。
痙攣する彼あるいは彼女。
無音の中で笑い続ける。
笑い声は聴こえてこない。
無音の中で笑い続ける。
そこで 目が覚めた。
○
それから三日間ほど悪夢を観た。
夜にはっと目が覚める。
内容についての詳細は忘れた。
現実は続く。




