あ
○○
寒い。
痙攣して 暖を取る。寒い。
昨夜は足裏が ちくちくと痛む程寒かった。
痙攣と寝具が うつらうつらと混ざり 寒い 寒い。
足裏を張り張り 腹を腰を震わせて 寒い。
しばらくして ほんのり 腹部に ぬくもりを感じた。
ぬるいだけの成果。ささやかな結末。 行き止まり。
○
熱意が有ったあの頃。
寒さに耐えた。 暑さも 湿気も 出血も 痣も 骨のヒビも どうという事も無かった。 その先に希望が有った。理不尽を越えて 良くなる。当たり前に思っていた。 いい大人に成ると信じ 具体を欠いたまま 素晴らしい ありふれた明日を ぽんと手に入れられると 根拠も無く 疑念も無く 思っていた。
時間が来れば そうなる。 間抜けにも 心から 自覚も無く 信じていた。
迎えに来る 理想が。ぼやけたままの。
○
お望み通り ぽんと理想が手に入った。ぼやけた理想が。あやふやな具体が。欲しかった実感が いよいよ 手に取る。
それで その程度か。
喜びは暖めない。 逆上せた頭も ついには冷える。 過ぎた時間は取り戻せず。 費用の回収は望めそうもなく。
理想が 忘れていた現実を 叩き付けた。僕へ。
理想は 優しくはなかった。 僕から。
○
今日も寒い。
寒いと ふと 良いことが 在りそうな 気がしてくる。
身体が 逃避をしようとしているのか。無根拠に 涌いてくる 仄かな明るさ。 乾いた 雲の少ない 寒い夜は もう家路に着くだけなのに 何処にもそんなモノは挟まる余地など無いのに すぐそこに在る
気がしている。
脛にまとわりつく冷気。
鈍い手指。
喜びは寒さに。
錯覚と分かっても ありありと。
真冬の羽音。
確認もせず。
虫など飛ぶはずもない。
夜の頭上で。
寒さは喜びに。
浮かれさそう。
思い出す。
軽い奴は山に呼ばれる。
僕は重いから大丈夫。
ふらふらと山には入らないさ。
裸足にサンダルだ。
穴も空いてる。
行くわけがない。
夜の山に。
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