あ
回っ ○○
痙攣に至り五年と少々 腰に工夫を凝らす。三十三歳手前の十一月。
精細かな腰使い。 壊れそうな 持ちそうな。
○
サモトラケノニケは一人だった。
裏の階段 踊り場で たった一人 展示されていた。
その時 僕たち 姉と僕の二人 以外 誰も居ない 静かな空間だった。
その時 贋作を展示しているのか 疑った。本物はもっと華やかな場所で。
それか 今の僕が 記憶違いをしているんだ。
サモトラケノニケは僕でも知っている。それがこんな辺鄙な 隅に有るなんて。
○
ルーブルの思い出。
脊椎が何個か多いとされる裸婦図 思ったより大きい。
モナリザ 思ったより ずっと 小さい。
そして 外れに居たサモトラケノニケ。
後は忘れた硝子の四角錐。
よく響く 太っちょ神父の声。座り込む長い足の物乞い。
甘いビール。甘い米。ぼこぼこした石畳。風に舞う白紙。
固く粘るフランスパン。 灰色の寒空。白人の青い虹彩。
○
足の指を傷付けた。棚に当たったら切れた。
血が滴り 床を汚した。 痛みは無く にちゃにちゃする感触で気付いた。 足裏は赤く。 後はそこかしこに 残る。
○
倉庫で 一人で うまくいかない。本物は一人。
空想の一人。 先行きは不透明で 幸せは有りそうもない。
優しさとは無縁。危うい腰の 闇雲の隙間。群青の空が明るく
○
体力も根気も無いという事が僕に切実な推進力を与えている。
繰り返して行えないのだ。心身の要望か 。
かき集めて バラけさせ 変質し 歪み 転がり 同じ結果を出すために 何もかも変わり続ける。 痙攣の内訳は でたらめだ。
僕自身でも その時の僕でしか いつの僕かで 出来ない。
でたらめで不確かで 認識もあやふやで 混乱し溶けかけ 変容し錯覚する。 大いに取り乱す。群青の空が眩い。
ナケナシノ ガラクタを組み替えて 組み替えて進む漂流。
同じだけど何もかも違うのだ。




