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冬夜の蝉時雨
暗い自室で横たわる。
寝台の上。
寝具にくるまり閉じられる目蓋。
うつらうつら。
眠りの狭間。
聴こえてくる蝉の叫び。
ツクツクホウシ。
ヒグラシ。
後は何かしらの蝉の種類が二三。
合唱し叫喚し強訴している。
ここ幾日かで何度か粉雪がちらつく冬の中。
居る筈がない。
居ないものが叫んでいる。
○
柄の中で刀身はぶら下がり浮いているか。
貫く目釘。
斬突の撃を和らげる。
柄に掛かる手もその様に相似する。
親指は目釘。
菱目に刺さる。
貫きはしないが。
残りの四指と掌は柄。
手の内で刀を浮かし気味に保持する。
一体成型の衝撃を知らない。
ゴルフクラブはどうだったかな。
包丁は。
金槌ああ玄翁は。
バット。
○




