あ
○○
頑張ったら 頑張った分だけ 迷う。
努力は県道を 離れさせ 街道に迷い混ませる。
長々懸かって もとの場所へ。足は棒に為った。
汗は身体を 湿らし濡らし。服は張り付いて。
髪は頭皮で 何時までも乾かず。
○
死骸の蛇が おばちゃんを 押し退ける。触れずに。
憐れに思い 蛇を袋に入れよう と思い立つ。目前の蛇は死んでいる。
○
殺虫剤を買い ビニール袋を入手。 路傍の 横たわった 朝と変わらぬ 夕暮れの姿に 手を差し伸ばす。近付け た手が 何となしに止まる。 蛇が突如起き上がり噛み付いた ら 予想が過る。 ふにふにする間。
南無三 と 気付けをしては無い予想を 脇に押し退けて わしりと掴む首根っこ。 ビニール越しに感触が。
○
殺虫剤を片手に 蛇を袋に。ぶらぶらさせて 帰る家路。
倉庫に取り敢えず 置いて 霊媒に任すか。
おばちゃんに 声を掛ける か。
これこれ 蛇を。
そうそう 死んでいる。
端っこへ 置いた。
まさか 死んでても 蛇を嫌いとは。そこまで蛇は駄目だったとは。
後退り する 人を まじまじ 見てしまった。
死んでますよ と 声を掛ける 思わず。
今 思い出しても。
戯画の趣が 有ったな。
味わい深い 表情だ。 今 思い出すと。
取り繕う のを忘れた 生の感情。演技かと思った。あんまりわざとらしくて。
おばちゃんだし 僕相手に 演技をしてもな。
戸棚の卵を 丸飲みにしている蛇 を若い頃見てしまって から それから 蛇は駄目だ そうな。
ふがふが飲みに 大口で ずるりと包む蛇の顎。
○
神経を研ぎ澄ます。
とっきんとっきん 体内へ。
それが 痛くない訳が 無いじゃないか。
○
奉納品はこちらへ。
ああ
切腹の時に短刀を置くのだ。 階段を登りきり 本殿賽銭箱の扉前。
三方に 紙が一枚 置かれている。
白く細い 長方形 黒文字で書かれた言葉。
物を奉納する人が 思ったより いる。