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参加者

「で?これが現在のベストメンバーなわけ?友久」

「いやまぁ、ラフィアが言うにはだけどな?」

「人のせいにしない!」

「すまん。いやでも俺だって今日初めて会ったんだぜ?」

お祭りから時間は過ぎ、次の日の正午。一緒に戦う仲間として選ばれた六人を目の前にして、友久は珍しく僕に頭を下げていた。

というのもこの人たち……

「なんで俺様がこんなところに呼び出されなくちゃいけねぇんだ!説明しやがれ!」

「すみません。僕なんかが選ばれてすみません」

「諦めよう諦めよう。アスプールなんかに勝てるわけないよ。無理無理」

「ちょっと!なんでこのブスがいるわけ!?聞いてないんだけど!同じ空気吸ってんじゃないわよ気持ち悪い」

「ごめんね明日菜ちゃん。私できるだけ邪魔しないようにするから……」

「話しかけてこないでよ。気持ち悪い」

「ラフィア様は?ラフィア様どこ?」

個性豊か過ぎない?ちょっと手に負えそうにないよ?

「みんなとりあえず落ち着こう。これからパテシアのためにみんなで一緒に頑張るんだから!」

「あの悠一がしっかりして見えるだと!?」

なんだと友久!とツッコミを入れる余裕すらないよ。

「俺様がお前らのために戦うだと?」

まずなんだこの俺様キャラは。誰だこんな奴呼んだの。

「ひぃ〜僕なんか役に立たないです。外してください」

うん。確かに外した方が良さそうなほどのネガティヴだね。

「諦めようよー。勝てるわけないよー誰かが倒してくれるの待ってよう」

こいつが一番ムカつくかもしれない。

「このブスと一緒とか考えられないから。気持ち悪い」

「あの……私、抜けましょうか?」

そしてどんだけ仲悪いんだこの姉妹。

てか本当に姉妹なの?そっくりらしいけど僕には顔分かんないし。

「ラフィアさまー。ラフィア様に会いたい!」

ラフィア様ラフィア様うるさいなこの子。まず戦える歳じゃなくない?

「友久……もう一度聞くけど本当にこれがベストメンバーなの?」

「俺も不安になってきた」

友久を不安にさせるとは。恐るべしベストメンバー。

「まぁまぁみなさん落ち着いてください」

ラフィアが、お茶を持って入ってくる。何やってんだあの滑舌おばさん。ラフィアにさせるなよ。

「ラフィア」

「「「「ラフィア様」」」」

ラフィアの登場に、俺様キャラ以外が声を揃えた。

なんだ?僕が同じことを言った時とはえらい違いだな。

「とにかく!この国が大変な時なのは分かってるだろ。お前たちが必要なんだ。力を貸してくれ」

友久が初対面に、しかも自分のことじゃないことで頭を下げてるよ。

こいつも、意外と本気なんだな。

友久の言葉とラフィアの登場もあって(こっちがメイン)五人は渋々協力することを認めてくれた。

そしてこの男も……

「仕方ねぇな。俺様の足を引っ張るなよ」

本気が伝わったのだろうか。一言多いながらも承諾してくれた。

でも、友久みたいに照れ隠しで言っちゃうだけかも。それなら、仲良くなれるかな。えっと……この人の名前は確か……

「ありがとう!ストラス」

「あ゛ぁ?てめぇなめてんのか?何呼び捨てにしてやがんだ。ぶっ殺すぞ!」

思って三秒で裏切られたよ。誰だ仲良くなれるとか言った奴、ぶん殴ってやりたい。

もう嫌。面倒くさいなー。

「はい。すみませんでした。ストラスさん」

棒読みでチャチャッと謝った。

でもこれで一応、戦うメンバーは揃ったわけだけど。

「でも、なんでこの六人なの?」

「えっと……ストラスさんは、適性も高く力魔法が得意ですし、クリニカさんは、世界で唯一重力魔法が使える方ですし、ピスナーさんは、いつもはやる気ないですけど、いざって時は頼りになりますし」

ふむふむ。ストラスにクリニカにピスナーか。一人歯磨き粉が交ざってるけど、言わないでおいてあげよう。

「さらに、明日菜さんと陽菜さんはこの国唯一の双子の姉妹で、合成魔法というものが使えますし、ハクくんは、とてもいい子です」

あれ?最後の子の理由が素晴らしくあっさりしてない?

「うわーやる気出なーい。家でゴロゴロしてたいよー。どうせ勝てないよー」

もう考えてる途中なのにさ、ピスナーはストラスとは違う意味でうるさいよ。スクールに頼んでこいつのやる気スイッチ探してもらうおうかな。

でもなるほど。みんなそれぞれ、優れたところがあるのか。よかったただの変人たちじゃなくて。

「それで?揃ったはいいけどこれからどうしていくの友久?」

「まず星を上げていかなくちゃ話にならない」

星?なにそれ美味しいの?

「星って言うのは、国のランクのことでパテシアは星ゼロで、アスプールは星三つです」

意味が分からなくてポカンとしている僕にラフィアが付け加える。

へぇー。アスプールってやっぱ強いんだ。

「じゃあどうやったら星って上がるの?」

「星を持ってる奴らに勝てばそいつらと同等の星を獲得出来るらしい」

じゃあ別に星なんか関係ないじゃん。アスプールとすぐに戦おうよ。

「ならさ……」

「お前みたいなバカはいきなり差を考えずに向かっていこうとするかもだが、そういうのを規制したルールがしっかりある」

僕の考えなどお見通しと言わんばかりに、友久はニヤついてやがる。ムカつくな。

「星の差が一以下の場合は、いかなる状況でも擬似戦争を申し込むことができ、またされた場合は断ることが出来ない、というルールです」

「このルールは逆に言えば、三つも差があるアスプールにいきなり戦いを挑むことも出来ないし、挑まれることもないってわけだ。まぁ弱い国の奴らを一方的にいじめないためのルールだろうな」

友久とラフィアのコンビプレー。やるな。

でもなるほどね。つまり僕たちはとりあえず、星一つの国に勝って星を手にし、さらに星二つの国に勝ってからじゃないとアスプールと戦えないわけだ。あれ?でも……

「じゃあさ、こっちが何もしなければあっちからは擬似戦争を仕掛けられないんじゃないの?」

あれ?僕ってもしかして天才かも。

「バカにしてはよく考えたが、それじゃダメだ」

あっそうなの?やっぱ友久が思いつかないわけないよねー。

「擬似戦争には個人戦ってのもあってそっちには星に関する規制がない。つまり、面倒ではあるが、やろうと思えばパテシアの国民一人一人に擬似戦争を申し込んでいくことも出来るわけだ。団体で勝てないのに、個人で勝てるわけがない。それをやられたら間違いなく俺たちは終わりだ」

珍しく友久が勝てないと断言した。それほどの差ってことか。

でも唯一の救いは、ハメスがそれを面倒くさいからと今すぐはしてこないってことだ。

「そう。それをやられたら終わりだ。だが、奴らはそれをやってこない。俺たちみたいな雑魚になら、どうせ団体の擬似戦争ででも勝てるから。そう高を括っているんだ」

なんて傲慢な驕り。あれ?でももしかしてこれも……

「その通りだ悠一。今お前が思った通り、それも、俺たちが弱いからだ。演説で言った通り、俺たちは中途半端に強くない。弱い。圧倒的に弱い。最弱だ。でもだからこそ、相手は油断している。だからこそ、どうせ勝てるからと相手はわざわざ必勝の手をとってこない」

そうだよ。ちょっとでも強かったら、ハメスもそこまで油断しないよね。

「ほらな?弱いからこそ、出来ることだってあるんだ」

すごいよ友久。正直、僕今まで友久が言ってるのはただの強がりかと思ってたよ。でも友久にかかれば、弱いことも武器になるんだね。

「でぇ?てめぇらだけで盛り上がってんじゃねぇよ!どうするのか説明しろや!」

うわっ怖っ。

「ラフィア様、あのお兄ちゃん怖いよぉ」

「そっかそっか。こっちおいで」

ラフィアが優しく抱きしめる。

ハクくんだっけ?本当にラフィアが大好きなんだなー。

僕もストラス怖いんだけど、「怖いよー」ってラフィアに抱きつきに行ったら、ここにいるみんなに殺されるんだろうな。子供の特権ってすごいな。

「簡単に言いますと、とりあえず隣国、タートルに戦いを挑みます」

くだらないことに感心している間に話は進んでいた。

タートル?なにそれ食べれるの?

「タートル。国のランクは星一つで、適正数値は一人平均千五百。得意とする魔法は水魔法。情報としてこんなもんだ」

ふーん。正直よくわかんないや。

「あんたらさータートルにいきなり勝てると本気で思ってるわけ?負けたらどうなるか分かってんの?気持ち悪い」

「やめなよ明日菜ちゃん。言い過ぎだよ」

「うるさいわね。ブスは黙ってなさい。気持ち悪い」

双子の姉妹の性格の悪そうな妹の方が、友久と姉の陽菜にカラむように言う。

えっと妹の方……明日菜だっけ?気持ち悪いが口癖の。

やめておけばいいのに。友久のことだ、ちゃんと分かってるはずだよ。

「バカにするな。分かってるに決まってるだろ。なぁ?悠一、言ってやれ」

そうだそうだー!ってあれ?僕?

えっ?何も聞いてないよ?

「なに?早く答えてよ。気持ち悪い」

あっすみません。

「分かんないなら考えろ悠一。タートルに負けたらどうなると思う」

「……すごく残念な気持ちになる、とか?」

「………………許せ。お前の頭の悪さを見縊っていた」

うん。それは友久が悪いね。僕に分かるわけないのにさ、まったく。

「何こいつ。バカすぎない?気持ち悪い」

長年の経験で僕には分かる。うん。あれは本気で引いてるね。

「明日菜さん落ち着いてください。悠一さんは、すごく頭が悪いだけでいい人なんです」

えっと……これは……

「ねぇ友久、ラフィアの今の一言は、僕を褒めてるんだよね?」

「いやバカにされてる」

くそ。そうだったのか。

「そうだよお姉ちゃん。バカな人にバカって言ったら可哀想なんだよー」

ハクくんが庇ってくれてる。

「友久、今度こそ褒められて……」

「理性をちゃんと持て。もっとバカにされてる。しかも子供に」

くそ。全然気づかなかった。

「もう!僕のことより、負けたらどうなるか教えてよ!」

「負けたら、相手国のどんな要求にも答えなければならなくなるんだよー。それこそ、国民全員砂人形になれ、なんて要求でもねー。ねぇだから諦めようよー」

ピスナーがいつものセリフを織り込みながらも答えてくれた。

「でもそんな要求無視しちゃえば……あっ」

言いかけたところで、僕も気づいた。

「そうなんですすみません。無視したら今度は本当の戦争になるんですすみません。でも、擬似戦争で勝てなかったのに戦争になって勝てるわけありませんすみません。つまり、無視したらたくさんの人が死んでしまうんですすみません」

いくらなんでも謝りすぎじゃない!?でもそうか……ならどんなに無理な要求でも受けるしかないのか……

「勝てばいい」

突然、友久が言った。

「負けたら終わりなのは、タートルもアスプールも一緒だ。だから負けた時のことは、その時考える」

そうだね。そうだよ!僕たち選抜メンバーだし、きっとやれるはずだよ!

性格はともかく、選りすぐりのものすっごい人たちが集まったに決まって──

「ねぇラフィア様。僕眠くなってきちゃったぁ」

──そうだ。子供がいたんだった。いい子なだけの。

アハハ。勝てる気がしないや。

こうして、お先真っ暗なまま、僕たちの特訓は始まり、時間は過ぎていった。



〜三ヶ月後〜

「立て!立つんだジョー!」

「燃え尽きたよ……真っ黄色な灰に」

「そりゃ真っ白だよ!」

「「アハハッ」」

こうして、僕たちの特訓は三ヶ月にも及んだ。

「嘘をつくな嘘を」

えっ?違った?

「なんでそこで諦めるんだ!」

「すみませんコーチ」

「諦めたら、そこで試合終了だよ」

こうして、僕たちの特訓は三ヶ月にも……

「だから嘘をつくな嘘を」

えーこれも違うのー。

「そんな色んなキャラを詰め込んだような奴は知らん」

はいはいそうですねー。

「ねぇ友久、露天行こうよ!」

「仕方ねぇなー」

僕たちがゲームの中の魔法世界に来てから、三ヶ月が過ぎたんだよねー。

友久と二人、王宮の広い露天風呂に浸かりながら感慨にふける。

結構色んなことがあったなー。と言っても、僕たちの世界とは時間の流れ?が違うらしいから、現実のことは考えなくて大丈夫みたいだけど。僕にはよく分かんないや。

「ねぇ友久、このままでいいの?」

「うーん?タートルとの対戦のことか?」

やっぱり友久も分かってるよね。タートルと戦うために始めた特訓が、難航してるなんて。

だってさだってさ、あの人たち自由過ぎるんだもん。

「既にタートルに宣戦布告は済まし、対戦までは三日しかない。にも関わらず、このままじゃ勝てる見込みゼロだからな」

そうだよ。このままじゃやばいんだよ。

「それでも俺は、この作戦で行く。この作戦は、あいつが自信を取り戻すために必要なことだ。絶対に譲るわけにはいかない」

友久……

「フルチンでカッコつけられてもねー」

「風呂なんだから仕方ねぇだろ」

そりゃそうだ。

でも、このままじゃきっと負ける。クリニカに、全てを任せて本当にいいのかな。

「負けたら、パテシアは終わりだよね……」

「いっそ逃げちまうか」

えっ?どうしたの友久らしくない。

「負けたらパテシアは終わり。だがそれだけじゃない。もしかしたら、加担した俺たちも殺されるかもしれないんだぞ。現実に帰る方法なら他に探せばいい。そもそも命をかけてまで助けてやる理由もないだろ」

友久がそんなことを考えてるなんて……全然知らなかった。

僕はダメだな。自分が悩んでる時は、すぐ友久に気づいてもらっといて。

そうだよね。負けたら、死ぬかもしれないんだよね。でもね友久。

「違うんだよ。確かに、帰るためにってのもある。最初は、同情から始めたところもある。でも今は、お祭りを一緒にして、笑顔を見て、温かくしてもらって、思ったんだ。ここの皆が死ぬのは嫌だな、って。それに、僕はラフィアにあの一言で救ってもらった。助けてもらったのに、自分は何もしないなんておかしいでしょ?だから、恩返しがしたいんだ」

胸の内を全て晒して、でももう一言。

「でもそれは、僕の話で、友久を巻き込める話じゃない。だから擬似戦争は僕たちだけで……」

「試しただけだ。お前が、昔のまんまかどうか」

へぇっ?そうなの?全然分かんなかっよ。

まったく友久はー。人を試すなんてさー。

「殺されたいのかな?」

「試したぐらいで罰が重たすぎるだろ」

アハハッ。嘘だよ。

「でも、なんで急に?」

「作戦のこと。お前が悩んでるからだ」

あっ。見抜かれてた。やっぱりすごいなー友久は。昔のまんまだ。

「クリニカに教えてやったんだろ?躊躇わないことが愛だって」

あぁ。そういえば。

「なら、あいつを信じることを、お前が躊躇うんじゃねぇよ」

そうか。そうだよね。

「それで?試された僕の判定は?」

「ふっ。お前は、昔から何も変わんないバカのままだ」

なんだと!!

「小学生で言うと下の上ぐらいだ」

下の下じゃないのか。ちょっと嬉しい。

「そこで喜べてしまう辺りが、バカの特徴だ」

何をやっているんだ僕の脳は。

「だが安心しろ。お前はバカな人間というより、頭のいいチンパンジーって感じだ」

えっ?頭のいい?褒め言葉?

「ほらな?これが褒め言葉に聞こえる辺りがバカの特徴二つ目だ」

本当に何をやっているんだ僕の脳は。

「まぁ、お前はそのままでいい。クリニカのこと、疑うんじゃなく心配してやってくれ。ただ悩み過ぎは良くない。分かるか?」

難しいな。疑わず、心配はして、でもし過ぎない、か。

「いいか?感情を処理できん人類は?」

「ゴミです」

「そう。お前のことだ」

くそ。ぶん殴ってやりたい。

「それ以外のことは、俺に任せておけ」

仕方ない。ちょっとムカつくけど、頼りにしておくか。

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