表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/27

9.ファイヤー

「さぁ、これでミコトが鬼なんかでは無い事が分かりましたか?」


 今まで二人のやり取りを見守っていたハデスが、満足げに笑った。


「え、うん。もちろん」


 バイスは一も二もなく頷く。


「では明日から、バイス様とミコトがきちんと喋る事ができるようになる為にも、私と貴方達が正しい意思疎通を図れるようになる為にも、言葉を教えます。同時にこの島で人間らしく生きていく為に必要な事も教えます」


 ハデスの言っている事は、バイスにはほとんど理解できなかった。

だが、言葉を教えてくれようと思っている事だけは、なんとか分かった。


「ハデス、私、教える?」


 ミコトは「教える」という単語だけ分かったらしく、しきりに「教える」を繰り返している。


「ええ。明日のために今日は、ひとまず火を起こして寝てください。色々あって疲れたでしょう? 明日は、夜明けから始めましょう」


 ハデスの言葉にバイスが空を振り仰ぐと、大分日が傾いていた。いつも自分の牢獄の松明には絶え間なく灯がともっていた。火がどこからどのようにして来るのかは知らなかった。


「えー、火作る。疲れる」


 ミコトは火の起こし方を知っているようだった。

 でも、やりたくないようで手近な木に登って寝ようとする。


「ま、確かにあのミコトの火の起こし方では疲れますね。では、今まで私を掃除してくれたお礼に、これをあげましょう」


 またしても、ハデスが言い終わると同時に、石の卓へ日の光を浴びてきらめく物が現れた。


「すごい!」

「だめです、ミコト。バイス様に使わせて下さい」


 歓声をあげて光る丸い小さい物を取ろうとするミコトを、ハデスが鋭い声で止める。


「僕が持つの?」


 バイスは光るものを手にする。

 それは、向こうが見えるのに石を持っているような感触のする不思議な物だった。無いようなのにあるような物……。


「ご飯を食べる時のお椀を持つように持ってください」


 ハデスの指示に、バイスは光る物をへこんでいる方を上にして持つ。

そんなバイスとハデスを、ミコトは気を悪くした様子も無く目を輝かせて見つめている。


「端を持って下さい。そう、それでよく日の光が当たるように、右へ、もう少し前。そうです。しばらくそのままで……」


 バイスは、自分が何をしているのかも分からないまま、ハデスの言うとおりにする。石を持ったまましばらく立っていると、足元で何かが焦げる匂いがする。


「バイス、下、火!」

「うわっ」


 ミコトの指摘に、バイスが下を見ると落ち葉が勢いよく燃えていた。牢獄の松明と同じように赤い火を上げて燃えている。


どうして火がついたんだ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ