3.鬼は光が苦手
「お前、逃げない。変」
鬼を木陰に連れてきて、まもなくして鬼が目を覚ました。
バイスをじっと見て、心底不思議そうに喋る。
「変じゃないよ」
鬼は辺りを見回して、更に不思議そうに首を傾げた。
「お前、私、助けた?」
「暑そうだったから、涼しいところに連れてきた」
「私、光、苦手」
バイスは目の前の人がやっぱり鬼だったと確信した。
村人から、鬼は光が嫌いだと聞いていたのだ。さっきは人を食べないといっていた。
だが、それは家畜のように太らせてから食べるために油断させたのかと思う。
光が苦手だという鬼を守るように、霧が周囲を渦巻いている。
霧を操る鬼に、バイスは恐れを感じた。
「お前。私、助けた。良い物見せる。来い」
言うが早いか、鬼は島の木が生い茂っている中を軽々と進み始める。
バイスは面食らいながらも、鬼とはぐれてはいけないと思い、慌てて後を追う。
途中、外を歩くことは慣れていないせいで何度も躓く。その度に、鬼は振り向き、手を貸してくれた。早くも、鬼だと確信した心が揺らぎ始める。
この人、鬼だよね?
まさか、その問いを本人に聞いてみるわけにもいかない。
牢獄暮らしで鈍っている体を必死に動かして、鬼の後を追うのだった。