勇者は○○に夢中です
「ふぅ、困ったもんですじゃ」
部屋に入るなりため息をつき開口一番にそう言って席に着いた。
「おや、どうなさった?」
先にいたものがその様子に反応した。
「何を困っているというのか、第42世界の」
「おぉ第12世界のもいたのかね。実に困っておるのじゃよ」
第42世界と呼ばれたものは一同を見回し、続けた。
「我らは数多ある世界のそれぞれにてラスボスを務めておるじゃろう。
世界の定めた運命に従って結末を迎えるように活動しておる。
運命の主役は世界を救う勇者じゃ。
運命を進めるには勇者がイベントをこなすしかないじゃろう?」
「ふむ。それで?」
何人かが頷き、先を促した。
「勇者がイベントをこなさなければ、運命は動かん。
どれだけ我らの準備が整っておようと、じゃ。
何日、何ヶ月どれだけ経とうと勇者が進まねば我らは何もできぬ!」
「それはそうだが第42世界の、何が言いたいのだ?」
長くなりそうなので第12世界と呼ばれたものは本題を尋ねた。
「いまわしの世界の勇者は
釣 り に 夢 中
で運命そっちのけなのじゃ!!」
第42世界の叫びが辺りに響いた。
少しの静寂が訪れ……
「お、オレのところもだ!」
「我の世界も!」
「わたしの世界でもです!」
「うちはカジノにはまって!」
「コッチは図鑑コンプに!」
「鬼ごっこのハイスコア狙ってて!」
「うちは武器強化や錬金にはまったみたいでなぁ」
「モンスターを仲間にするのに夢中で!」
「なわとびずっとやってるのぅ」
「隠し宝箱探すのに夢中になってる」
「遺跡でずっと発掘してるぞ、オレのとこは」
「今はスノボーにハマってる」
「カードゲームを極めておるのじゃ」
「ひたすら金稼ぎしておる」
「大根 盗ンデル」
「なんか旗探してるゼ」
「…アルバイト…してる…」
「トロフィー集めとるぞ」
「ポスターを貼ってるよ、ひたすらね」
「横道に入ったまま出てこない」
「称号集めとるな」
たくさんの同様な悲痛な声が続いた。
多くの世界で勇者は目的を失っているようだ。
「このままカジキが釣れなければ…いやまだカツオも釣れておらん…他にも釣る気の様じゃし…
どうしたらいいのじゃ……?」
「しかし我らには運命を動かす力はないぞ!?」
「なんであんなにやりこみ要素を創ってしまったんじゃ!」
「もう随分と長いこと進んでないなぁ」
「うちは攫った姫が退屈してるからってモンスターたちと仲良くし始めたのだが」
「俺は隠しボスだけど仲間だから一緒に釣りとかしてるな」
「お前それならイベントこなすように言えよ」
「あんな勇者に言えねぇよ。すげぇ形相なんだぞ!」
「一刻も早く世界救って欲しいんだけどな」
「勇者が来る直前に滅ぼされる町の住人 (雇われ)がまだかまだかって待ってんだけどさぁ。もう無人でもいいかなぁ?家帰りたい言ってんだよね」
「同じ所にものすごく出入りしておるせいで近隣住民から苦情きてるのだが。わしのところに。解せぬ」
「うちだけかと思ったら意外と皆様同様な状況なのですねぇ」
「エネルギー 不足 近イ」
「うちは周回だからもう諦めているゼ」
「我らにはどうしようもできぬぞ…」
「勇者のせいで経済流通がおかしくなってきたのだがどうしたら?」
「由々しき事態じゃのぅ」
どうしたら勇者は先に進むのか。
数多のラスボス達は、頭を抱えた。
彼らのその悩みが尽きることは勇者が先に進まない限りーーーーーーーーーーーーーーーーーーー無い。
いろいろなゲームのラスボスたちが集まって悩みを打ち明けてみました。
キャラは知らないから適当だけどね!
よくあるやりこみ要素と適当に有名どころ?を書いてみました。
ゲームは好きだけどやりこみ要素で躓き挫折することは多い…
でもやってる間はそれに夢中になる。
正直世界を救うより今コレをクリアすることに命賭けてる!
みたいな状況になる。
少しでもクスッとしてもらえたらいいなぁ