ベットの下で蠢く物
息抜きに書いてみた
夜の帳が完全に下りたその日。
月明かりがカーテンに遮られた部屋に、僅かに空いた窓の隙間から網戸を通して、時折些かの涼しさを含んだ風と、虫達の合唱が入り込んでいる。
部屋の中には、丈が百五十センチメートル程の箪笥が入り口の真横と、入り口から見て正面の位置に二つ据え付けられている。
そして、その箪笥から避ける様にして置かれている、長方形の、四隅に足が付いている木製のベットが一つあり、木の板が張られた床には雑多な物が散らばっている。
「あつい……」
ベットの上で寝返りを打ちながら、独り言を呟く男が一人。この部屋には、この男の他には誰も、何もいない……はずだった。
風が殆ど入ってこないので、体温だけがどんどん上昇していく。
時刻は、もうすぐ深夜の二時。
普段ならば寝ているはずのその時間に、その高まる体温から男は眠れないでいた。
格好は、白い無地のランニングシャツにポリエステル百パーセントで作られた短パンでいる。
母がデパートで割引きしていた安物を買ってきた為、シャツの肌触りが悪い。今日に限って安物を買ってきた母に対して恨みを覚えてしまう。
正直な所を言えば全裸で寝たいが、それは男の中の羞恥心が許さない。
既にシャツは大量に出る汗を吸い、湿っていて気持ちが悪い。短パンの下に隠れたパンツもそれは同じで、酷く湿っていた。
男は中学生の為、明日も通常通り学校だ。いい加減寝ないと朝が起きられないと心中で思い、目をギュッと瞑り本格的に寝に入る。
だが、暫く瞑目していると眠りを妨げるかの様に、何処からともなく音が聞こえてくる。
トン………………トン……トン
不規則に小さく、しかし確かな音が耳朶を打つ。
ーー何かがいる。
男は直感的に思う。
だが、音は何処から聞こえるのだろうか。それと、このトンと言う音の正体は……。
この音に対して、男は興味七割恐怖三割と言ったところだ。疑問に思うことがあったが、それは一先ず置いておいてこの何かを探そう。興味本心から男はそう決めて、音源を探し始める。
まずは、耳を使って探す。
今一度あの音を耳で拾い上げようと、集中する。
すると、何秒もしない内にあの音がま聞こえてきた。
トン……トン………………トン
前回同様不規則なか細い音だ。
「マジこれなんだよ……」
呟いた独り言は、電気がついていない為に生まれる、月明かりの朧な光を含んだ闇へと吸い込まれていく。
ただ、先程聞いて分かった事が一つ。
どうやらこの音は下から聞こえるようだ。
それも、自分が寝ているベットの下から。
未知なる物が真下にいると知り、心臓がドクンと跳ね、頬を一筋の汗がしたり落ちる。
知らない物、何なのか分からない物を見るという事に恐怖はある。
だが、それが何なのか知りたいという興味から、場所が分かったのなら物体を視認したい。
僅かばかり葛藤に悩ませられたが、ここまできて見ないなどない。男はそう決心し、ベットの下を覗こうとする。
ベットの下を覗くに当たって、明かりが必要だと気づく。
男は天井に設置されたLEDの電気をつける為に、元の紐を延長する為の市販の紐がついて通常の二倍の長さになった紐を引く。少しの抵抗感を力でねじ伏せ、紐をそのまま引ききる。
僅かなタイムラグを持ち、電気がつき、一瞬で部屋全体をLEDの白い明かりが包み込む。
先程までの暗闇から、急激に明るくなった為に自然と目を細くしてしまう。
暫くそうしていながら明かりに目を慣らし、心の準備を整える。
耳を澄ますと、未だにあの音が聞こえていた。
そして、気持ちを落ち着かせながら徐にベットの上から上半身だけを下にやり、覗きに入る。
やけに心臓の音がうるさい。
鼓動が激しく動き、汗が頬をから顎へと伝わりそのまま床へと垂れる。
寒くもないのに、二の腕に鳥肌が立つ。
ゴクリと口に溜まった唾液を飲む音が、いつも以上に響く。
そんな些細な事にも気を張りながら、とうとう下を覗き始める。
ベットの下は電気をつける前程ではなかったが、暗かった。
だが、見えない暗さではない。
ベットの隙間から白い明かりが入り込んでいるので、目を凝らせば何とか見れるくらいだ。
男は目を凝らしてベットの下にあるであろう音源を捜索し始める。
すると、ベットの左の奥隅に何かがーーいた。
その何かは奥にいるので明かりに当たらず、シルエットしか分からない。
時折上下に動いたりして、留まる事を知らないみたいだ。
「生き物なのか、これは……」
つい疑問に思った事が口に出てしまった。
これの正体が何なのか知りたい、視認して納得したい。
その興味さから、男は決断する。
ここで立ち止まっていても仕方が無いと意を決して、手をベットの下へと伸ばす。
ギリギリまで手をベットの下へと入れて、目が使えないので模索する。
そして、遂に、何かに触れる。
触れた瞬間は未知との遭遇に慄いたが、直ぐに思い直してそれを握り掴む。
握り掴んだそれは、確かな柔らかさとほんのりとしか温かさを持っていた。
明かりの元へと手を持ってきて、握った手を開く。
手の中から現れたのはーーーー蛙だった。
そう、蛙だ。
英語表記はFrog。
脊椎動物亜門・両生綱・無尾目・カエル目に分類される動物だ。
ベットの下は掃除されてなく、大粒の埃が充満していた。
蛙はその大粒の埃を体に幾つか貼り付け、さながら一つ大きな埃と化している。
蛙が、手の中から飛び出そうと必死にもがいている。
男はそれを許すまじと軽く蛙を握る手に力を込めて束縛する。
「てか、なんで蛙が……?」
その通りだ。
何故蛙がベットの下なんかにいたのか。
だが、その答えを男は知らない。
多分、この先一生知ることはないだろう。
ーーですが、これを読んでいる読者の皆様方には特別に教えて差し上げましょう。
……なんて言えたら良いのだが、こればかりは言いたくても言えない。
なんたって、作者自身が理由を知らない男の正体なのだから。
これ、実体験です
実際に中学一年生の頃に体験しました
ホント、なんでいたんでしょうかねぇ
網戸とかちゃんと閉まってたのに……
多分、トンと鳴っていた音は蛙が跳ねてい音でしょう
逆にそうでなかったらあの日の音の正体はなんなのか分からないので、これ以上深く考えるのはやめますか
それでは(。-∀-。)




