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図書マド  作者: 裏紙
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第3魔術 シャノンの行方

早速新キャラ登場です

第3魔術 シャノンの行方




「ここはシャノンの定理を使って〜〜」


教授の声が教室に響き渡り、僕はそれをせかせかとノートに書き取る。一息ついた後、今朝のことを考えてみた。

シウはあの後、知らないの一点張りであり、少々記憶が混乱しているようだった。僕は時間もそろそろだったので大学へ登校。そして、講義を受けている現在に至るというわけだ。


「はぁ〜」

僕は肩ひじを机に付け、アゴに手を置きながらため息を付いた。


「あの子、今頃どうしてるんでしょうか。お昼の場所はメモしてきたから飢え死にはしてないと思いますが……」


そうである。何を隠そうシウを一人で家に置いてきたのだ。学校に連れて行く事も考えたが、荷物が重くなるのが嫌だ。それに僕らの大学にはマッドサイエンティストがたくさんいる。私は理工系だが生命系の研究室も多数ある。彼らにシウが見つかってしまうと、色々弄られて解剖された末にホルマリン漬けにされてしまう未来しか思い浮かばない。

僕はガクブル震えているシウを想像して思わず口元が緩んでしまった。隣に座っていたの学生が若干顔を引きつらせているが僕とは関係ないはずだ。手に持っているペンを二回転させてから再び思考を始める。

彼女は記憶が混乱していて不安定かつ常識も全くない。一人にすると何を仕出かすか……やはり早退して様子を見に帰るべきだろうか。


ガタガタガタガタ


僕が帰るかどうか考えあぐねていると、急に建物が揺れ始めた。机に置いてあったペットボトルやペンが揺れで床に落ちる。


「じ、地震かぁ!?」


ガヤガヤ、ガヤガヤ


皆が騒ぎだす。ちらほら机の下に隠れる人もいる。僕も隠れるべきだろうか?

そんな事を考えながら教授があたふたしている様を見ていると、揺れはしだいに大きくなって行きた。何だか揺れが足音のようにも聞こえるのは僕だけだろうか。


ガラガラガラ …………パリッーン!!


揺れが一瞬止まった後、窓ガラスを突き破って何かが教室に侵入してくる。

人型のその生物はまるで映画のワンシーンのように腕をクロスさせ、窓ガラスを突き破った後、勢いを殺す為に前転をしながら転がって行った。だが中々勢いを殺しきれないのか、教室にある机や椅子を薙ぎ払いながら転がって行く。あっ、今誰か轢かれた。


侵入者はこの500人収容できる巨大な教室の窓から反対側のドアまで辿り着くと、そのまま壁にぶつかると思われた。

しかし、奴は速度を維持した状態で垂直の壁を登って行き、天井で緊急停止すると、驚く事にそのまま降ってきたのだ。


「ヒャッーーハァーー!!」


周囲にいる人間は皆、空いた口が塞がらず天井からなにやら叫びながら落ちてくる人物を見つめていた。


「……あっ、ピンク」

ドゴーーン!!


誰が言ったか分からないが、そんな一言を最後に僕達の教室は崩壊した。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「クッ、何が起きたんですか?よいしょっと」


僕は瓦礫の山を退けながら自分が無傷である事に驚く。周囲を見渡しても気絶はしているが怪我をしている者はいなかった。


「って、ここ6階だったんですよ!!こんな事あり得ないでしょ」


そうである。僕達の教室は6階にあったのだ。建物自体が崩壊しているので助かる事など普通ではあり得ない。


「それになんですかこのコンクリート、まるで発砲スチロールみたいじゃないですか……」


建物の残骸に触れてみると、それは普通のコンクリートと違い、おおよそ建築物には使われないであろうとても軽い素材でできていた。


ヒューーン

ん、何処かで聞いた音が……。ふと、壁がなくなり開放的になった天井を見上げる。


シュタッ!

着地音と共に謎の女の子が降ってきた。慣性の法則によって遅れて降りてきたスカートがヒラリと踊る。


ちんまりとした身体つきに、日曜朝にやっているヒーロー物のキャラクターがプリントされている靴。スカートにはヒーローの顔のアップリケ。腰にはこれまたヒーロー物の変身ベルト。フードの付いた服にもドデカイヒーローの首が描かれている。

そして、何と言ってもその顔には……、


「仮面ファイター!!、ここに惨状・・・!! キリッ」


この仮面を付けた小さなヒーローが先ほどの大惨事を起こした張本人である。その姿は、正しく日曜日の公園でヒーローごっこをしている小学生であった。どう見ても6階建ての建造物を垂直に駆け登り、窓ガラスを突き破り、建物の床をブチ抜く力があるようには思えない。


「やっぱり背景爆発させた方が登場シーンがカッコ良くなるね。ふむふむ、今度からこの登場パターンを使おう。いいよね、てんちゃん」


彼女は空に向かって暫く独り言を呟いた後、突然此方に顔を向けてきた。僕と彼女の視線が交じり合う。


「アイツかな?」


仮面のヒーローはその長い髪を揺らしながら一歩ずつ僕の方へ近づいてきた。僕はただ彼女を見つめ返す。


ジャリッ、ジャリッ、ジャリッ


廃墟と化した校舎の残骸が踏み潰される。2リットルペットボトル一本分の距離にまで来ると彼女は停止した。

ズイッと仮面を被った顔が突き出される。僕と彼女のおでことおでこが触れ合った。僕にそっち系の趣味はないが、その筋の人にはこのシチュエーションは中々美味しいのではないだろうか。

それにしても、


「さあ、俺様に〜ィ。潔く【本】を渡して貰おうかァ?」


そのセリフはあんまりだろ……


ーーーーーーーーーーーーーーー


少女独特の高い声が響く。だが、ビシッと決めたポージングの後に発せられた一言はやられ役の怪人が吐く台詞そのものだった。

僕達の現状を簡単に説明すると学校一強いヤンキーにカツアゲされそうになっている一般生徒といった感じだ。ヒーローがやりたいのか、ただの仮面を被った怪人をやりたいのか全くもって不明だ。


僕が暫く黙ったままでいるとヒーローはヤンキー座りを止めて立ち上がった。


「あっれェ? 【本】の反応、この辺りからなんだよなァ、てんちゃん」


ヒーローは首を反らして背後の何かへ話しかける。すると彼女の服についているフードから最近どこかで見たようなジュース缶サイズの黒い小人が現れた。


「おっかし〜なぁ。この辺りだと僕は思ったんだけど。この人も【本】を持ってないや。次当たろうよ、ほのちゃん」

「ダメだってんだろ、てんちゃん!この姿の時は正義の味方、仮面ファイター!!なんだぜェ。仮面ファイター!!って呼んでくれよ」


てんちゃんと呼ばれた小人はごめんごめんと軽く謝る。このまま僕の事も忘れて【本】とやらを探しに行ってくれるとありがたいのだが。


「でも仮面ファイター。僕の姿、そこの人間さんに見られちゃったよ?」

「はぁー、そんなの決まってるだろォ」


仮面の少女が此方に一歩踏み出す。僕は反射的に一歩下がる。冷汗が頬を伝う。数歩下がるも、相手との距離は短くならなかった。


「……消んだよォ」


周囲の空気が急に重みを増した。ヤられるッ!と覚悟を決めた僕だが、助けは思わぬところから現れた。


「ん? 仮面ファイター、向こうの方から【本】の反応があるよ」

「違う違う、仮面ファイター!!であって仮面ファイターでは断じてないぞ。ビックリマークは大切だよォ、てんちゃん」


語尾の上がった声でヤンキーのように喋る仮面ファイター(仮)

小人は再び軽く謝った後、仮面の少女は陸上競技でよく使われるクラウチングスタートの構えを取る。


「捕まってろ、てんちゃん。全速全開でターゲット確保に向かうぜぇ。ヒャッハーー」


そして、ハイテンションなファイターが一歩踏み出すとその爆風で僕らの学校は……








……生まれて初めての空の旅を味わっていた。

仮面俺っ子登場!!

ということでストック切れてしまいました。続きの展開も4話もできてはいるのですが、まだ調整中です。

学校のテストがあるので次話投稿は時間かかるかもしれませんが一週間以内には投稿したいと思います。

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