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図書マド  作者: 裏紙
3/6

第2魔術 必殺技

O・S・H・I・O・K・Iがあります。

第2魔術 必殺技




ジリジリジリ、ジリジリジリ


目覚ましの音が聞こえる。


「な、何事!? 敵? 敵なの? マスター起きて、敵襲ぅ〜!!」


何かが僕の頭をぺちぺちと叩く。

うるさいなぁ、もうちょっとマシな起こし方はないのだろうか。


「もぉ〜、マスターが起きないなら私がアイツを倒すしかないよね。……でもでもぉ、もし私が一人でアイツを倒せたらマスターは私を認めてくれるかも、それどころか寝込みを襲われそうになったマスターを護った事で私を敬い出すかもしれないんだよ。ッフフフフ、敬うがいい、そして……ブツブツ」


僕は何かブツブツ呟いている物体を無視して目覚まし時計のボタンを押す。

静かになった部屋の中で何かがブツブツ呟く声だけが聞こえる。


そういえば昨日、参考書から変な奴が出てきたんだっけ?僕は目を擦りながらベットから這い出す。


「あれ?マスターもう起きちゃったの。ちぇっ〜」


昨日出てきた変なやつこと、魔導書のシリウスちゃん?が僕の存在に気付いたようだ。


「あっ、そうだマスター、敵がいるんだよ。バッタンバッタンのギッタンギッタンにしちゃおうよ!!」


僕はベットからむくりと起き上がり、シリウスちゃんのいる方に顔を向ける。先ほどから彼女が敵だと叫んでいるのは目覚まし時計の事であった。確かに普通の目覚まし時計ではなく、怪獣王ゴシラくんの目覚まし時計なので、全長は彼女の倍近くある。これだけの身長差があれば恐怖を感じて敵だと思うのも無理はないかな。


「あのね。それは目覚まし時計といって、僕が遅刻しないように起こしてくれる道具なんですよ。敵じゃないんです」

「で、でもガォーって威嚇してたよ? 押さえ込もうとしても暴れて威嚇を止めなかったんだよ」


両手を挙げてガォーと威嚇のポーズをマネるシリウスちゃんはそのちんまりとした体格と少し舌足らずの声もあいまって非常にカワイイ。これでは威嚇の意味もなく襲われてしまう。というか逆効果だ。

おそらく、彼女はジリジリ鳴りながら振動している時計を止めようとして、返り討ちにあったのだろう。というか彼女は目覚まし時計を知らないのか?


「魔導書さんは目覚まし時計を知らないんですか?」

「貴方はマスターなんだから、私の事はシリウスって呼んでよ。魔導書は名前じゃないんだからね。プンプン」


プンプン何て声に出していう人いたんですね。まあ、人じゃないけど。


「シリウスちゃんでもいいんですけど、お隣さんが飼っているワンちゃんの名前もシリウスなのでややこしいですね。縮めてシウちゃんでどうですか?」

「シウ……なんかいい響きだね。素敵な名前。でもちゃんは止めてよね。私はもうそんな年じゃないんだよ」

「ではシウと呼び捨てても良いですか?」

「問題ないよ。むしろドンと来いだよ」


胸に拳を当ててドーンと行動で表しているシウを見てふと思った事を質問してみる。


「シウ、貴方が以前に起きていたのはいつの時代なんですか?」


僕はまだ彼女のことを何も知らないことに気付いた。あまり興味もないですけど。


長い話になるだろうと考え、熱々のコーヒーをお気に入りのマグカップに注ぐ。椅子に座ってゆっくりとシウの話を聞く事にした。

彼女はテーブルの上にちょこんと座り、僕があげた小さなカップに入っている蜂蜜レモンをペロりと舐める。


「あまあまぁ〜。甘いのは良いことだよ。正義だよ」


本当にとろけてしまいそうな顔になってるシウ。サイズ的にもちょうどマシュマロみたいな感じである。


「それを取り上げても良いんですよ」

「わ、わかったよ。言うんだよ。だから取らないでぇ〜」


僕が話を急かす為に少し脅すとシウは涙目になりながら蜂蜜レモンの返却を拒否した。そして、彼女は語り出す。彼女の歩んで来た欲望と闘争ばかりの壮絶な過去を、


「私が以前いた時代は……」

「いた時代は?」


沈黙が当たりを包む。僕はマグカップをテーブルに置き、ゴクリと唾を飲み込んだ。


「知らないよそんなの」


スパンッ!

ピギャーー!!


僕は無言でデコピンをシウにお見舞いする。ふざけた子には御仕置きです。

変な声を叫びながら彼女がテーブルから落ちる。

すると、テーブルの下から魔導書がすっと現れてシウが落ちるのを防いだ。


「いたたた。何おする!私わちゃんと答えたんだお。それなのにマスターわ……何なのこの仕打ちわぁ〜」


シウがおでこを押さえながら潤み過ぎた瞳をこちらに向け、魔導書の上でピョンピョン跳ねる。

どうやら抗議しているようだが、僕はなんとも言えない気持ちになった。


「あれだけ期待させたシウが悪いんです。でも、おでこ大丈夫ですか?思わずデコピンしてしまいましたが、君は小さいからダメージも大きかったのではないですか?」

「ああ、それには及ばないよ〜。痛みはあるけど、私ってば魔導書だから災害級魔法でもビクともしないんだよ」


要するに雷や台風などの自然災害に直面しても痛いけど、怪我は無いよって事でしょうか?


「ならば、問題ありませんね。これからはじゃんじゃん打ち込んで行きますよ」

「な、なんでなんだよ。それじゃあ私はボッコボッコのドッロドロになっちゃうじゃないかぁ〜」


シウは焦って講義するが自分の発言のせいで追い詰められてしまっていることに気付いていない。彼女はアホの子なのだろう。


「怪我がないなら問題ないでしょう。そもそも君がまともな行動を取れるならしないですよ」

「そなのかぁ〜。よかったよ。私は賢いから同じ失敗は二度としないんだよ。マスター残念でしたぁ」


あっかんべー、としながらシウは此方を挑発してくる。


ピシッ

ムピャーー


シウが弧を描くように飛んでいく。僕のデコピンスキルがまた上がってしまったようだ。


デコピンって極めると凄いですよね。

基本こんな感じでシウは小生意気な近所の小学生レベルです。主人公は突っ込みながらシウの精神的成長を見守るスタイルです。(体は成長しないので)

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