『どうか、生きることをあきらめないで』
ねぇ、ママ 私を見捨てた大好きな人
私の声はもう届かない 蔑む視線が突き刺さるだけ
私がとったんじゃない 無理やりだったの
どれだけ叫んでも あなたは背中を向けて消えた
体を這う あの人のどろりとした温もり
心が切り裂かれる音を 笑顔で塗り潰す日々
握りしめた布を越えて 爪が肌を抉る
痛みだけが 汚された自分を繋ぎ止めていた
心がなければ どれだけ幸せだっただろう
冷えた部屋で あなたの微笑みだけを夢見ていた
朝になれば 何事もなかったかのように制服を着る
大丈夫と鏡に笑いかけ 誰かの幸せから目を逸らす
学校は唯一の居場所 夜の恐怖を忘れられる聖域
耐えきれずにこぼした秘密は 信頼という名のナイフに変わった
誰にも言わないで 果たされなかった約束
あの子は 私の前から消えていった
噂は毒のように広がり 私は娼婦と呼ばれた
身に覚えのない言葉が積み重なり 居場所は砕け散る
誰も信じない 誰も頼らない もう助けなんて求めない
私は玩具じゃない 誰かの欲を満たす道具じゃない
傷つけたいなら好きにすればいい
その間に私は 私の道を探すから
リビングに流れる穏やかな挨拶は 私を殺す毒薬
寝息が吐息に変わる頃 現実という鎖に縛られる
涙と涎に濡れた髪 吐瀉物を飲み込む痛み
朝日が照らす日常が 何よりも残酷な悪夢だった
蝶にしてあげる 甘い誘惑は蜘蛛の糸
年齢を偽り 蜜の味も知らぬまま蜜を売る
心にない言葉を並べ 誰かを搾取する道具に成り果てた
踏切の警報音が 早く壊れてしまえと急かしている
だけど私はもう 何も考えていない
涙は枯れた 笑顔さえ作れれば それで生きていけるから
絵本作家になりたかった 誰かの宝物を作りたかった
けれど文才もなく 宝物だった物語は痛みに変わった
忌々しい家へと続く帰り道 赤い点滅が視界を焼く
もう 十分がんばったよね
遮断機を潜ろうとした私の腕を 強く掴んだ大きな手
見上げた先にいたのは 幸せそうな恋人たち
彼らが私を救い 止まっていた涙が溢れ出した
ネカフェで眠る日々 通う病院の白い廊下
そこで出会った『 』という光
誰かを救う手になりたい その憧れが新しい物語の始まり
医療学校の教室 響く声は眩しすぎて怖かった
昼は未来のために学び 夜は生活のために嘘を売る
二つの世界で震える私を もう辞めなよと叱ってくれた友達
やつれた顔に気づき 醜い過去さえ優しく包み込んでくれた
その温もりに触れて やっと私は過去を振り切った
二度とあの日々には戻りたくない けれど
あの地獄を通らなければ 今の私には辿り着けなかった
言葉じゃ足りない感謝を 今歩んでいるこの道に刻む
立つことができた場所 触れてくれる温もり
ずっと欲しかった宝物は もうこの手の中にある
いつかこの痛みさえも 誰かを癒す詩になる
私は今 色に溢れた世界で生きている
この物語に触れた、今も傷つく誰かの、生きる糧となりますように。




