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60点だった俺のカンスト人生〜底辺レベル1のアラサー社畜、超難関ゲートに落ちて神竜を簒奪(オーバーライト)したら世界最強になっていた〜  作者: kiro


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計画倒産(サーバーリセット)の阻止と、CEO解任動議




『――最終防衛プロトコル、起動』


『――ローカルサーバー(地球)の物理的フォーマットまで、残り60秒』


アビスの純白の空間が、真っ赤な警告色アラートに明滅する。


玉座の残骸の中心で、半壊した創世神(CEO)の体が、まるで超新星爆発を起こす直前の恒星のように、おぞましい光と熱を放ち始めていた。


『ハハハハハッ! もはや誰にも止められん! 私の権限を上書きしようと、このサーバーそのものが物理的に消滅すれば、貴様らもただのデータ(チリ)だ!!』


「……チッ、最後の最後で『計画倒産(自爆)』に持ち込む気か。本当にどこまでもタチの悪い経営者だな」


俺は舌打ちをし、目前で膨張を続ける破壊のエネルギーの塊を睨みつけた。


地球全体をフォーマットする規模の自爆。いくら俺が過半数の権限(51%)を握っていようと、システムを稼働させるハードディスク(地球)そのものを物理的に爆破されてしまっては元も子もない。


(……力づくで抑え込むか? いや、俺の神竜の出力でも、星一つの消滅エネルギーを完全に相殺するのは不可能だ。相打ちになれば、地上の社員たちが巻き込まれる)


『残り、45秒』


無機質なカウントダウンが、死の宣告のように響く。


だが、焦りはなかった。俺は漆黒のオーダースーツの襟を正し、深く息を吸い込んだ。


「……なら、物理的に防ぐんじゃなく、システム的に『自爆コマンドそのもの』を無効化すればいいだけの話だ」


俺は、胸の特異点コアに意識を集中させた。

俺の魂と繋がっている、地上で戦う五人の社員たち――しずく、灰原、ルミ、バハムート、リチャード。


彼らが各大陸のメインサーバーを掌握し、俺に送り届けてくれた【権限】のライン。俺はそれを、俺の【EX:絶対経営権】と完全に同期シンクロさせた。


「おい、クソCEO」


俺は、膨張する光の塊に向かって、静かに、だがアビス全体を揺るがすほどの覇気を持った声で言い放った。


「お前は今、地球を巻き込んで自爆しようとしている。……だが、その自爆を実行するための『決裁権』は、もうお前一人には無い」


『……何を、言っている……?』


CEOの声に、微かな戸惑いが混じる。


「お前が自爆コマンドを実行するには、管理者権限による承認が必要だ。だが、今のシステム権限のシェアは、お前が49%、俺たち【朝倉商事】の株主(社員)が51%を握っている」


俺は、一歩前に踏み出し、赤黒いオーラを纏った右手を、CEOの自爆エネルギーのコアに向かって真っ直ぐに突き出した。


「つまり、俺たち過半数の株主が『その自爆(計画倒産)には反対だ』と否決すれば、お前のコマンドはエラーを起こして実行されないんだよ!!」


『ば、馬鹿な!? 最終防衛プロトコルは、絶対不可侵のハードウェア命令だ!! ユーザーの権限で干渉できるはずが――』


『残り、10秒』


「しずく! 灰原! ルミ! バハムート! リチャード! 全員、俺に承認のハンコ(魔力)を寄越せ!!」


俺が叫ぶと同時、世界中のメインサーバーから、俺の特異点に向けて五色の光が爆発的な勢いで流れ込んできた。


『議案に対し、反対票を投じます!』


『借金(自爆)の踏み倒しは許しません!!』


『残業(世界滅亡)はお断りです!!』


『私の資産(地球)を勝手に消さないで!!』


『この星の未来(市場)は、俺たちが守る!!』


五人の支社長たちの意志コマンドが、俺の【絶対経営権】と融合し、一つの巨大な「拒否権ベトー」のプログラムとして実体化する。


『残り、5秒』


「これが……!! ブラック企業に虐げられてきた平社員たちの、労働組合ストライキの力だァァァッ!!!」


俺は、特異点から溢れ出した赤黒い管理者権限キャンセルコマンドを、CEOの膨張するコアに直接叩き込んだ。


『残り、3秒』

『2』

『1』

『――!??!』


CEOが絶叫しようとした、その瞬間。


『……エラー。過半数の権限保持者による【拒否権】が発動しました』


『……最終防衛プロトコル(サーバーリセット)の実行を、強制的にキャンセルします』


プツンッ、と。


アビス全体を赤く染めていた警告色アラートが消え、耳障りなサイレンが鳴り止んだ。


CEOが星を消し飛ばすために集束させていた超絶的なエネルギーが、まるで風船の空気が抜けるように、シュルシュルと音を立てて萎んでいく。


『な……ぜだ……。私の、私の世界が……私の会社が……!! たかが人間の……平社員ふぜいに……!!』


自爆すらも封じられ、完全に力を失った光の残骸が、床の上で惨めに蠢く。


「……どんなに理不尽なルール(利用規約)を作ろうと、現場で汗水垂らして働く社員(人間)がいなけりゃ、会社システムは回らないんだよ」

俺は、CEOの残骸を見下ろし、冷たく言い放った。


「お前は経営者として、一番やっちゃいけないミスをした。……現場(俺たち)のポテンシャルを見誤ったことだ」


俺は右足を高く上げ、完全に無力化した創世神のコア(中枢)に向かって、最後の一撃を振り下ろした。


「お前はクビ(解任)だ。さっさと社長室アビスから出て行け!!」


バキィィィィンッッ!!!!!


俺の踵落としが、創世神のコアを完全に粉砕した。


光の集合体は、断末魔の悲鳴すら上げることもできず、無数の輝く塵となってアビスの純白の空間に溶け込み、そして――完全に消滅した。 


『――システムアナウンス』


『――SYSTEM_ROOT(CEO)のアカウント消去を確認しました』


『――全権限が、筆頭株主である【朝倉健人】に委譲されます』


『――新管理者(新社長)の誕生を確認。地球ローカルサーバーを、新体制へと移行します』


アビスの空間に、祝福のようなファンファーレの電子音が鳴り響く。


同時に、足元の水面に映っていた地球の映像から、赤黒いダンジョンの侵食が次々と消え去り、元の青く美しい星の姿へと戻っていくのが見えた。


終わったのだ。


理不尽なシステムによる強制的なデスゲームは、今日この日、一人の最強の平社員による【究極の敵対的買収(M&A)】によって、完全に終結した。


「……ふぅ。これでやっと、溜まりに溜まった有給休暇が消化できそうだな」


俺はネクタイを外し、誰もいなくなった静かな社長室の真ん中で、これまでにないほどの深い、そして満足げなため息を吐いた。

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