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60点だった俺のカンスト人生〜底辺レベル1のアラサー社畜、超難関ゲートに落ちて神竜を簒奪(オーバーライト)したら世界最強になっていた〜  作者: kiro


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深淵の特異個体(エラー)と、星屑の妖狐


ダンジョンの底をぶち破って現れた、隠しエリア『深淵アビス』。


そこは、発光する青い水晶に覆われた、どこまでも続く巨大な地下大空洞だった。


「……ふぅ。やっぱり、これくらい歯応えがないとな」

俺はワイシャツの袖をまくり上げ、軽く首を鳴らした。

足元には、先ほどまで俺を食い殺そうとしていた【レベル1600:アビス・ナイト】の残骸が転がり、光の粒子となって俺の体に吸い込まれていく。


『ティロリンッ♪』

【レベルが上がりました:850 → 912】


ただの素振りが巻き起こす風圧だけで階層ボスを吹き飛ばしていたさっきまでとは違い、ここでは「本気で殴る」ことができる。


頑丈なバケモノたちを、全力の拳で叩き潰す快感。アドレナリンが脳を駆け巡り、俺はすっかり仕事の疲れを忘れていた。


その時だ。

『ギャァァァッ!!』


水晶の森の奥から、鼓膜を劈くような咆哮と、それに怯えるような「キュゥゥ……」という小さな鳴き声が聞こえた。


俺が気配を殺して音のする方へ跳躍すると、そこでは一方的な蹂躙が始まろうとしていた。


体長5メートルを超える、ライオンと山羊と蛇が融合したような醜悪な合成獣。


【レベル1800:アビス・キマイラ】


その凶悪なバケモノが、水晶の壁際で「小さな黒い毛玉」を逃げ場のない死地へと追い詰めていたのだ。

よく見ると、夜空の星屑をちりばめたような美しい毛並みを持つ、子狐のようなモンスターだった。


『グルルォォ……』


キマイラがヨダレを垂らしながら、震える子狐へと巨大な顎を開く。


「……まあ、見過ごす理由もないか」


トンッ、と。

俺はキマイラの頭上に飛び乗り、その脳天に軽くカカト落としを入れた。


『ガァァ――グッ!?』


ドゴォォォォォォォォォォォンッ!!!


咆哮を上げる暇すらなかった。

俺の渾身のカカト落としを食らった合成獣は、強靭な頭蓋骨ごと地面にめり込み、そのまま巨大なクレーターを作って跡形もなく爆散した。 


【対象の経験値を吸収しました】

【レベルが上がりました:912 → 960】


「ふぅ。残業代わりにしては、いい運動になったな」

舞い散る光の粒子の中で、俺はワイシャツの襟を正して振り返った。


そこには、腰を抜かしたようにペタンと座り込んでいる黒い子狐がいた。


俺はシステムウィンドウを呼び出し、目の前の小さなモンスターを【鑑定】してみる。


そこに表示されたのは、またしても見慣れない文字列だった。


【個体名:星屑の妖狐アストラル・フォックス

【レベル:1】

【等級:EX(深淵の特異個体)】

【スキル:『無限収納アイテムボックス』『影渡り(シャドウ・ゲート)』】


「EX等級……俺と同じ、エラーやバグの類ってことか」

ダンジョンのシステムから外れた、世界にただ一体の特異な存在。だからこそ、通常のルールで動くバケモノ(キマイラ)から異物として狙われていたのかもしれない。


レベル1の赤ん坊では、空間を移動する『影渡り』のスキルを使う間もなく、高位モンスターの圧倒的な殺気に当てられて身動きが取れなくなっていたのだろう。


俺がまじまじと見つめていると、子狐は「キュゥ」と鳴いて、トテトテと俺の足元に歩み寄ってきた。


そして、俺の革靴にスリスリと頬を擦り寄せてくる。星屑のような毛並みが、チカチカと淡い光を放っていた。

「おいおい、バケモノの巣窟にいたくせに、随分と人懐っこいヤツだな」


俺がしゃがみ込んで頭を撫でてやると、子狐は気持ちよさそうに目を細めた。どうやら、同類(バグ・EX等級)である俺の魔力に惹かれているらしい。


俺は改めて、ウィンドウに表示されたスキルに目を落とした。


「モノを出し入れできる『無限収納』に、空間を跳躍できる『影渡り』……。営業マンの俺からすれば、重たい書類カバンを持ち歩かなくて済むし、満員電車に乗らずに一瞬で会社まで通勤できる最高の相棒アシスタントだな」


俺がそう言って笑うと、子狐は言葉を理解したかのように「キュウッ!」と嬉しそうに鳴き、ポンッと淡い光に包まれた。


そのまま、俺の足元の『影』の中へとスゥッと溶け込んでいく。どうやら、俺の影を自分の居場所と定めてくれたらしい。


「よろしくな、クロ。……っと、いけねぇ」


腕時計を見ると、時刻はすっかり深夜の2時を回っていた。


いくら俺のスタミナが無限(疲労無効)だとしても、明日の朝9時には会社に出社して、いつも通りデスクに座っていなければならない。世を忍ぶ仮の姿(60点のサラリーマン)を維持するためには、社会人のルールを守る必要がある。


「今日はこれくらいにして、帰ってシャワー浴びるか。……クロ、試しに家の前まで跳べるか?」


俺が影に向かって問いかけると、足元の黒い靄が『任せて!』とばかりに揺れた。


俺は影の中に潜む相棒と共に、深淵の闇から自宅の前へと空間を跳躍した。


自分が壁をぶち破って開通させたこの地下空間アビスの存在が、地上でどれほどのパニックを引き起こしているかなど、知る由もなかった。


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