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60点だった俺のカンスト人生〜底辺レベル1のアラサー社畜、超難関ゲートに落ちて神竜を簒奪(オーバーライト)したら世界最強になっていた〜  作者: kiro


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ボスが弱すぎたので、ダンジョンの「底」をぶっ壊してみた

F級ダンジョン・地下10階。


この初心者向けダンジョンの最下層であり、ボスモンスターが待ち受ける大広間。


重厚な石の扉を押し開けると、そこには玉座にふんぞり返る身の丈2メートルの『ゴブリン・キング』と、その護衛である数十匹のホブゴブリンが待ち構えていた。 


『グルルォォォッ!!』


侵入者である俺(スーツ姿にビジネスバッグ)を見るや否や、キングが下品な咆哮を上げる。


【ボスモンスター:ゴブリン・キング】

【レベル:50】


システムアナウンスが脳内に響く。

レベル50。

一般人からすれば脅威だが、プロの探索者からすれば通過点に過ぎない存在。


今の俺(レベル850)からすれば――。

「……はぁ。やっぱり、こんなもんか」


俺はネクタイを弄りながら、深くため息をついた。

数十匹の護衛が一斉に襲いかかってくるが、欠伸が出るほど遅い。


俺はビジネスバッグをその辺に置き、ただ前に向かって歩き出した。そして、迫り来るゴブリンたちの群れに向かって、適当に右足を振り抜く。


――パァァァァァァァンッ!!


空気を蹴り飛ばした「風圧」だけで、強風に煽られた枯れ葉のように、数十匹のゴブリンがまとめて壁に叩きつけられ、光の粒子となって消滅した。


『……ギ、ギャ?』


玉座に座っていたキングが、何が起きたのか理解できずに間抜けな声を漏らす。


俺はそのままキングの目の前まで歩み寄り、その分厚い胸板を人差し指で軽く突いた。


「終わりだ。残業代にもなりゃしねぇ」

ドゴォッ!!


指先から放たれた衝撃がキングの背中を突き抜け、巨大な肉体が跡形もなく弾け飛んだ。


コロコロと、ボスの討伐報酬である小さな『魔石』が床に転がる。


【F級ダンジョンの踏破をクリアしました】

【帰還用のゲートが生成されます】


広間の中央に、地上へ戻るための青白い光の扉が出現した。


「……つまんねぇ」

誰もいない広間で、俺はポツリとこぼした。


新宿のイレギュラー・ゲートで味わった、あの血が沸騰するようなヒリヒリとした熱狂。それが欲しくてわざわざダンジョンに来たのに、まるで満たされない。


俺が強くなりすぎたせいだ。この程度の箱庭じゃ、もう俺の『100点』は出せない。


「ダンジョンの最下層って、これ以上下には行けないのか?」


俺は何の気なしに、ボス部屋の奥――行き止まりになっている分厚い石壁に手を触れた。

その時だった。


【マスターの『渇望』を確認】

【EXスキル:『概念破壊ブレイク・ルール』が適用されます】

【対象:ダンジョンの階層制限プログラム】


「……ん?」



パキッ……パリーンッ!!


俺が壁に触れていた手のひらを中心に、空間そのものに亀裂が走り、まるでガラスが割れるように「行き止まりの壁」が粉々に砕け散ったのだ。


「うおっ!?」


砕け散った壁の奥から、冷たくて重い、死の気配を孕んだ瘴気がドッと吹き出してくる。


そこには、地の底の底へ、漆黒の闇へと続く『隠し階段』が口を開けていた。


『――警告。エラー。エラー。未承認のアクセスを検知』


『ダンジョンの底が破壊されました。隠しエリア【深淵アビス】へと接続します』


【出現モンスターの平均レベル:1500〜】


脳内に鳴り響く、けたたましいシステムのアラート音。

通常なら絶対に開くことのない、ダンジョンのバグ空間。レベル1500以上の化け物たちが蠢く、正真正銘の地獄の蓋を、俺のスキルが物理的にぶっ壊してしまったらしい。


吹き付けてくる濃密な瘴気。肌を刺すような、圧倒的な強者のプレッシャー。


これだ。俺が求めていたのは、このヒリヒリするような感覚だ。


「ははっ……やってみるもんだな」


俺はスーツのジャケットを脱いでビジネスバッグに突っ込み、シャツの袖をまくり上げた。


「さぁて……ここからが本当の『サービス残業』だ」

俺は一切の躊躇なく、漆黒の深淵へと続く階段を駆け下りていった。


 ◇ ◇ ◇

同じ頃。


地上にある探索者ギルド東京本部は、けたたましいサイレンの音と共に大パニックに陥っていた。


「どういうことだ!? 説明しろ!!」

「わ、分かりません! 新宿区にある初心者用の第8ゲートから、突然あり得ない数値の魔力反応が検出されました!」


モニターを監視していたオペレーターが、悲鳴のような声を上げる。


夜間当直だった受付嬢の高梨も、信じられないものを見る目で巨大なメインモニターを見上げていた。


「魔力波長、F級から一気に跳ね上がっています! C……B……A……ダメです、測定器が振り切れます! S級……いや、それ以上の『災厄級』にダンジョンが変異アップデートしています!!」


「馬鹿なっ! 内部の探索者はどうなっている!?」

「現在、浅い階層にいた探索者たちは強制排出されましたが……一人だけ、内部に取り残されている生体反応があります!!」


高梨は手元のタブレットで、取り残された探索者の入館記録を照会する。

そこに表示された名前に、彼女はハッと息を呑んだ。


【入館者:朝倉 健人】

【等級:F(測定エラー)】


「あ、朝倉さん……!?」

昨日の今日で、またしても致死率100%の異常事態に巻き込まれてしまった彼を思い、高梨は青ざめる。


「急ぎ、S級の『獅堂』様へ連絡を! すぐに救助に向かわないと、あのサラリーマンの人が死んでしまいます!!」


ギルドが「哀れな一般人が最悪のバグダンジョンに飲まれた」と絶望の淵に立たされている中。


その当の本人が、嬉々とした表情で深淵のバケモノたちを素手でタコ殴りにしていることなど、知る由もなかった。



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