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60点だった俺のカンスト人生〜底辺レベル1のアラサー社畜、超難関ゲートに落ちて神竜を簒奪(オーバーライト)したら世界最強になっていた〜  作者: kiro


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黒曜の革靴と、名家のお嬢様(同行者)


東京・丸の内。


日本のビジネスの中心地は、今や巨大なバケモノの解体現場(屠殺場)と化していた。


『ギ、ガァァァァ……ッ!!』


「うるさいぞ。俺の会社を壊したんだ。……解体音くらい我慢しろ」


俺は、暴喰獣の右前足に続き、左前足、そして巨大な後脚を、神竜の筋力で次々と空間ごと『引きちぎった』。


レベル3万相当の絶対的な装甲が、ただのワイシャツ姿の男の素手によって、薄紙のように破かれていく。


「これで四肢は終わりだ」


ダルマ状態になり、恐怖に赤目を震わせる暴喰獣の脳天に、俺は無造作に右手を突き入れた。

『ピ、ピーッ……致命的エラー……!!』


「エラーじゃない。これは『正当な損害賠償』だ」

俺がその中枢で脈打つ極大の魔石を握り潰すように引き抜くと、A級の支店長(隠しボス)は断末魔のノイズを上げ、光の粒子となって爆散した。


『ピロリンッ!』


『――経験値を獲得しました。レベルが39から51(51,000相当)に上昇しました』

『EXポイント:40を獲得しました』


後に残されたのは、あらゆる光を飲み込むような極上の光沢を放つ『黒曜の魔石(特級素材)』だった。


俺は血で汚れた手を払い、システムウィンドウを開く。


「システム。この生地をベースに、どんな悪路も踏み砕き、絶対に汚れず、俺のスーツに完璧に合う『概念武装:黒曜の革靴レザーシューズ』を構築しろ」


『――特級素材の提供を確認。EXポイントを35消費し、構築を実行します』


魔石が光の粒子となり、俺の足元を包み込む。

機神の凍結魔法でボロボロになっていた安物の革靴が、完全なオーダーメイドの、鏡のように磨き上げられた漆黒の革靴へと変貌した。軽くステップを踏むと、瓦礫を豆腐のように踏み砕く圧倒的な強度が伝わってくる。


「……右袖、左袖、インナー、スラックス、そして革靴。……残るは『ジャケット(上着)』一つだけだな」


俺が完成した革靴を見下ろしていると、背後から足音が近づいてきた。


天羽だ。彼は周囲の惨状と、息を引き取った部長たちを一瞥し、静かに目を伏せた。


「……遅かったな、俺たちが」

「……ええ」


俺は振り返り、燃え盛る丸の内のビル群を見上げた。


怒りは限界を突破し、一周回って『極寒』へと冷え切っていた。


「天羽さん。残りのA級支店長を回ってジャケットの素材を探すのは、後回しにする」


「ほう。では、どこへ行く」


「決まってる。……諸悪の根源(本社)だ」

俺は、遥か北の空を睨みつけた。


「北海道のダンジョンが再起動するまで待ってやる義理はない。今日、今から北海道のダンジョンの最深部を物理でこじ開け、あの白衣の野郎(役員)を引きずり出して『完全解体』する」


俺の静かな、しかし絶対的な殺意のこもった宣言に、天羽は獰猛に笑った。


「いいだろう。……だが朝倉、俺はここで別行動を取らせてもらう」


「天羽さんが?」


「ああ。他のA級ダンジョンも、いつ丸の内のように暴走ブレイクするか分からない。俺の『絶空』なら、エラーを起こしたバケモノにも対応できる。……俺は東京に残り、本土の防衛と残りの支店長の鎮圧を引き受ける」


確かに、システム外のバケモノを殺し切れるのは、俺と、レベル1000の壁を超えて概念破壊を獲得した天羽だけだ。


「……助かります。丸の内の残務処理と、千葉にいる雨宮さんのことも、頼んでいいですか」


「任せておけ。お前は気兼ねなく、北海道のシステムをぶっ壊してこい」


俺と天羽が拳を突き合わせ、完璧な分担(業務フロー)を決めた、その時だった。


「ち、ちょっと待ちなさい!!」


瓦礫に座り込んでいた【紅蓮の戦乙女】神楽坂ミレイが、ふらつく足で立ち上がり、俺を指差した。


「あなた、たった一人で北海道のメインサーバーに乗り込むつもり!? 相手がどれだけ非常識な存在か分かっているの!? さっきのバケモノの比じゃないわよ!」


「分かってる。だから殺しに行くんだ。……一般人はすっこんでろ」


「い、いっぱ……っ、私はS級第4位よ!」


ミレイは顔を真っ赤にして怒鳴った。

名家・神楽坂家の令嬢として生まれ、常にトップクラスの才能を持て囃されてきた彼女にとって、「一般人」扱いは最大の屈辱だった。……が、それ以上に。


(なんなの、このひと……! さっき神様みたいなバケモノを素手で解体したかと思えば、今度は北海道の元凶を一人で潰しに行くですって……!?)


ミレイの胸の奥で、経験したことのない激しい動悸が鳴り止まなかった。


強者としてのプライドを粉々にへし折られた恐怖。そして、それ以上に、自分を死の淵から救い出したこの得体の知れないサラリーマンの圧倒的な背中から――目が離せなかったのだ。


「だ、だから……その、危ないからっ! S級のこの私が、特別に同行してあげるわ! 光栄に思いなさい!」


ミレイは腕を組み、ツンと顔をそっぽに向けながら、震える声でそう言い放った。


「は?」俺は眉をひそめた。「足手まといだ。邪魔になる」


「あ、足手まとい!? 私は【反逆の業火】で格上の攻撃だって相殺できるわ! さっきだって、私が時間を稼がなかったら、あなたの会社の人は全員ペチャンコだったのよ!」


「……っ」


その言葉に、俺は押し黙った。

確かに、彼女が己の命を削って時間を稼いでくれなければ、部長の最期の言葉を聞くことすらできなかった。


「……私の炎なら、あなたの死角をカバーできる。それに、神楽坂家の情報網を使えば、北海道への移動ルートも一瞬で確保できるわ。……連れていきなさいよ、バカ」


上から目線なのに、どこか必死にすがりつくような、ポンコツ感の漂う瞳。


深窓の令嬢ゆえに「他人(特に男性)に興味を持つ」という感情(恋愛)に極めて不慣れな彼女は、自分の胸のざわめきの正体が分からないまま、ただ「この人について行かなければ」という本能だけで動いていた。


「……朝倉。連れて行ってやれ」


天羽が、面白そうにニヤニヤしながら口を挟んだ。


「彼女の固有スキルは本物だ。お前の大雑把な物理攻撃をサポートする『火力枠』としては、悪くない人材だぞ」


「……チッ。勝手にしろ。ただし、俺は一切お前のサポート(労災の面倒)は見ないからな」


「言われなくても自分の身くらい自分で守るわよ! ……えっと、朝倉、健人……だったかしら。私は神楽坂ミレイよ。よろしくねっ!」


ミレイがパッと顔を輝かせ、綺麗な手を差し出してきた。


俺はその手を無視し、血に染まったワイシャツのまま背を向けた。


「行くぞ。……不法占拠者どもの本社を、今日で更地にする」


最凶の平社員と、恋を知らない紅蓮の戦乙女。

全く噛み合わない二人の、システム破壊を懸けた北海道への「復讐の出張」が、今始まった。


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