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60点だった俺のカンスト人生〜底辺レベル1のアラサー社畜、超難関ゲートに落ちて神竜を簒奪(オーバーライト)したら世界最強になっていた〜  作者: kiro


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支店長(隠しボス)のノルマと、可視化された絶望(ステータス)



【C級ダンジョン・灼熱の火山】の最深部。


ダンジョンボスの巨人を倒してマグマの海が引いた『湖底』には、不気味なほどの静寂だけが広がっていた。


通常の探索者なら、ここで業務完了クリアとして引き返すところだ。だが、俺たちの本来の目的はこんな「表のボス」ではない。


「……やっぱりな。空間の魔力が、この湖底の中心で不自然に途切れてる」


俺は新調したばかりの漆黒のインナー(クールビズ・ベスト)の上から首を鳴らし、何もない虚空を見据えた。


「北海道の氷の宮殿と同じだ。このダンジョンシステムの裏側――不法占拠者(執行官)どもが隠れている空間への扉が、巧妙に隠蔽されてやがる」


天羽が刀を肩に担ぎ、ニヤリと笑う。


「どうする? 鍵穴すらないぞ」


「鍵が掛かって引きこもってるなら、物理でこじ開けるだけだ!」


俺は何もない空間に右手の指を深くねじ込み、神竜のスキル(概念破壊)でそのシステム外の隠し扉を、文字通り力任せに『引き裂いた』。


メリメリメリィィィッ!!


まるで分厚い防弾ガラスを素手で割ったような破砕音と共に、空間そのものが砕け散り、奥に隠蔽されていた異空間が完全に露出する。


けたたましいアラート音と共に、そこに鎮座していた「一体の異形」が姿を現した。


全身が純白の金属と、赤熱するエネルギーチューブで構成された、四つ腕の機械神。この火山ダンジョン専用に設計された特注の殺戮兵器だ。


俺は即座に【鑑定】を放つ。


【エネミー:炎獄の機神(C級ローカルサーバー管理体)】

【レベル:測定不能(ERROR)】


だが、次の瞬間だった。


『ピロリンッ』

『――観測者のクラスが【EX(超越者)】に到達していることを確認』


『認識フィルターを解除。対象の隠蔽数値を可視化します』


俺の視界で、エラーを起こしていた文字がカチカチと組み替わり、新たな数値が浮かび上がった。


【レベル:EX-12(既存レベル換算:12,000相当・システム外領域)】


「……レベル、1万2千?」

俺は思わず目を丸くした。


レベル999で頭打ちだった人類には絶対に見えなかった、文字通りの『桁違い』の数値。こいつらが【鑑定】で測定不能エラーになっていたのは、単に既存のシステムで表示できる桁(上限)を突破していたからだ。


だが、ここで俺の中に「ある疑問」が浮かんだ。

(待てよ。こいつがレベル1万2千だとして……じゃあ、北海道であの『天使』をぶっ壊して【レベル32】になった、今の俺のステータスはどうなってるんだ?)


俺は慌てて、自分のステータス画面を呼び出した。


認識フィルターが解除された俺のステータスには、隠蔽されていた「真の数値」が追記されていた。


【氏名:朝倉 健人】

【クラス:EX(超越者)】

【レベル:32(既存レベル換算:32,000相当)】


「……さんまん、にせん?」


俺は自分の手を見つめ、全てを理解した。

俺が一番最初、ダンジョンで『終焉の古龍(神竜)』に遭遇した時のことだ。俺はあいつを倒したのではなく、その存在ごと『吸収』してしまった。


本来ならレベル9999を優に超える古龍の莫大な経験値。それは、不完全なシステムの「レベル999上限」に阻まれ、ずっと俺の中で『ERROR(未払い賃金)』として眠っていたのだ。


だが、あのパッチで上限が解放された瞬間。システムは俺の中に眠っていた『レベル9999の経験値』をベース(基本給)として一気に読み込み、その後溜め込んでいた経験値も合算して俺を【EXクラス】として再構築していたのだ。


EXクラスのレベル1は、実質レベル1万からのスタート。


つまり、今の俺は――目の前のバケモノを遥かに凌駕する、正真正銘の『規格外バグ』だ。


泥人形バグの強制アクセスを確認』


隠し部屋から引きずり出された四つ腕の機神が、無機質な声で告げ、背中のブースターから超高熱のプラズマを噴き上げた。


『我々ローカルサーバーの目的は、この箱庭で泥人形の命を喰らい、エネルギーとして蓄積すること。……規定のノルマに達すれば『ダンジョンブレイク』が引き起こされ、S級の深淵アビスにおわす【執行官】の皆様が、直接この表層(地上)へ降臨なされるのだ』


「S級ダンジョンの、さらに深層アビス……?」


天羽の顔色が変わった。S級探索者である彼ですら到達したことのない、システムの本当の裏側。


俺はニヤリと笑った。


「つまり各ダンジョンは独立した『支社』。で、人間を殺してノルマを達成すれば、アビス(本社)から役員(執行官)が直々に表敬訪問してくるってわけだ」


俺の言葉に、天羽も獰猛な笑みを浮かべて刀を抜く。


「分かりやすい例えだ。……他の支社がノルマ達成ブレイクを急いでいるということだな。なら、やるべきことは一つだ」


「ああ。末端の支社長(隠しボス)どもを全員物理でぶん殴ってレア素材をカツアゲし、最後にS級のアビス(本社)に乗り込んで、クソ役員どもに直接クレーム(物理)を叩き込む!」


『――理解不能な思考パターン。排除プロセスを実行』


機神が四つの腕に極太のプラズマブレードを発生させ、俺たちに襲いかかってきた。


「まずはC級の支社長から、退場リストラしてもらうぞ!」


俺は一気に地を蹴り、機神の懐へと肉薄した。

四本のプラズマブレードが俺を両断しようと迫るが、俺の『漆黒の右袖』と『クールビズ・ベスト』が、その超高熱の刃を完全に遮断して弾き返す。


『な……!? 泥人形が、概念武装を……!?』


機神(レベル1万2千)のシステムが驚愕にフリーズした一瞬の隙。


背後から跳躍した天羽の『絶空』が、機神の四つの腕を空間ごと綺麗に切り落とした。


「格が違うんだよ、もらったァッ!!」


俺はがら空きになった機神の純白の胸部装甲に、レベル3万2千相当の神竜の魔力を圧縮した右拳を叩き込んだ。


「『神竜式・空間破砕ドラグーン・スマッシュ』!!」


――ドゴォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!


鼓膜が破れる轟音と共に、EX-12の支社長(隠しボス)が、空間ごと抉り取られて粉々に砕け散った。


『ピロリンッ!』


『――経験値を獲得しました。レベルが32から45(45,000相当)に上昇しました』

『EXポイント:13を獲得しました』


機神が消滅した跡には、眩いほどの『白金の魔石(特級素材)』が転がっていた。


「よしっ! これで下半身の防御も固められるぞ!」


俺はすぐさま手に入れたポイントと白金の魔石を投入し、どんな悪路でも絶対に破れず、足の疲労を無効化する『概念武装:漆黒のスラックス(ズボン)』を構築した。


足を軽く曲げ伸ばししてみる。どれだけ動いても一切のシワが寄らず、足が羽のように軽い。

「素晴らしい。これで俺の防御力は『右腕、胴体、下半身』まで完成した!」


残る無防備な部位は「左腕(左袖)」と「革靴」、そして全体の「ジャケット」だけだ。


「……喜んでいるところ悪いが、朝倉」


天羽が、崩れゆくダンジョンの空間を見渡しながら言った。


「各ダンジョンが『独立した時限爆弾』だということは、いつどこでノルマが達成され、執行官や隠しボスが地上に降りてくるか分からないということだ。のんびり仕立てている暇はないぞ」


「分かってる。次は【B級ダンジョン・氷雪の高原】だ。左袖の生地をもらいに行くぞ」


俺は、完璧なスラックスの裾を直し、不敵に笑った。


S級のアビスに潜む幹部たちを全員引きずり下ろすための、最強のサラリーマンと剣聖による「全国ダンジョン出張(隠しボス狩り)」が、今、本格的に幕を開けたのだった。

 


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