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60点だった俺のカンスト人生〜底辺レベル1のアラサー社畜、超難関ゲートに落ちて神竜を簒奪(オーバーライト)したら世界最強になっていた〜  作者: kiro


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初めての100点満点と、新宿ゲート生還

たった一度の素振りで、広大な荒野に一直線の巨大なクレーターが穿たれた。


舞い上がる土煙を見下ろしながら、俺――朝倉健人は、自分の両手をまじまじと見つめていた。


「これが、俺の力……?」


視界は恐ろしいほどクリアで、数百メートル先の砂粒すら鮮明に見える。体は羽のように軽く、全身の血管にマグマのようなエネルギーが駆け巡っていた。


等級の『EX』が何を意味するのかは分からない。ただのエラー表示の可能性もある。


だが、この体に満ちている暴力的なまでのエネルギーと、3つのチートスキルがもたらす力だけは『本物』だった。


その余韻に浸る間もなく、空気を震わせる不気味な羽音が響き渡った。


『キシャァァァァァァァァッ!!』


見上げれば、血のように赤い空を黒く塗りつぶすほどの群れが迫っていた。


全長10メートルを超える、鋼鉄の鱗を持った怪鳥の群れ。探索者の知識がなくてもわかる。あれはテレビの緊急特番で見たことがある『災厄指定』のモンスター、装甲飛竜アーマード・ワイバーンだ。


【個体名:装甲飛竜アーマード・ワイバーンの群れに遭遇しました】

【平均レベル:750】

【推奨討伐ランク:A級〜S級パーティ(最低5名以上)】


システムアナウンスが無機質に告げる。

本来なら、日本のトップエリートたちが命懸けで挑むレベルの化け物ども。それが数百体。


レベル1の俺が遭遇すれば、1秒で肉片も残らず食い殺される絶望的な状況だ。

だが――。


「……逃げる気なんて、これっぽっちも起きないな」


俺の口角は、自然と吊り上がっていた。

恐怖はない。あるのは、全身を内側から焦がすような、得体の知れない『熱狂』だけだ。

俺は大地を強く蹴り飛ばした。


――ドゴォォォォンッ!!


足元の岩盤が爆発したかのように砕け散り、俺の体は砲弾のように上空数百メートルへと跳躍した。


『ギャガッ!?』


突然目の前に現れた獲物に、ワイバーンたちが一斉に襲いかかってくる。


鋭い牙と爪が俺を切り裂こうとした瞬間、俺は空中で体を捻り、無造作に右拳を振り抜いた。


「邪魔だ」

バキィィィィンッ!!


凄まじい破砕音。

ワイバーンが誇る、あらゆる魔法を弾くという鋼鉄の鱗。それが、ただの『素手』の殴打によって、まるで薄いガラスのように粉々に砕け散った。


【EXスキル:『概念破壊ブレイク・ルール』が適用されました】

【対象の物理・魔法防御を完全に無視します】


殴り飛ばされた一体が、後続の数十体を巻き込んで肉塊に変わる。


空中に投げ出された俺に向かって、今度は四方八方から灼熱の火炎ブレスが放たれた。


「まだまだァッ!!」


空気を足場にするように蹴りつけ、俺は炎の雨を紙一重で躱しながら群れの中枢へと突っ込む。


殴る、蹴る、引き裂く。


ただの暴力。武術の心得なんて一切ない、素人の喧嘩殺法だ。それでも、俺の一撃はあらゆる防御を貫通し、レベル750の化け物たちを文字通り「ワンパン」で消し飛ばしていく。


【EXスキル:『終焉の竜核エンシェント・コア』が稼働中】

【マスターの疲労を完全に無効化。スタミナ・魔力を常時全回復します】


「ははっ、息一つ上がらねぇ……最高じゃねえか!!」

空中でどれだけ無茶な動きをしても、どれだけ全力で拳を振るっても、一滴の汗も流れない。筋肉の軋みも、息切れも存在しない。


ただ無限に湧き上がる力を、全開で解放し続ける快感。

テスト勉強も、仕事も、常に「60点」で妥協してきた俺の人生。


『本気を出して動く』ということが、これほどまでに気持ち良くて、脳汁が溢れ出すような体験だったなんて知らなかった。


「全部、喰らってやるよ……ッ!!」


俺が最後の1体を両手で引き裂いた瞬間、空を覆っていた群れは完全に全滅していた。


戦闘時間、わずか3分。


パラパラと降り注ぐワイバーンの残骸が、突如として光の粒子に変わる。


それらは意志を持ったように俺の体へと殺到し、次々と吸い込まれていった。


【EXスキル:『暴食の覇竜グラトニー・ドラゴン』が発動しました】


【討伐したモンスター312体の経験値と能力を、超絶倍率で吸収します】


ティロリンッ! ティロリンッ! ティロリンッ!

脳内で、軽快なレベルアップ音が壊れたように鳴り響く。


【レベルが上がりました:1 → 150】

【レベルが上がりました:150 → 320】

【レベルが上がりました:320 → 550】

【レベルが上がりました:550 → 812……】


プロの探索者が数年、あるいは十数年かけて血反吐を吐きながら到達する領域を、俺はたった数分の乱闘で駆け抜けてしまった。


「はは……こりゃ本当に、ただのバグだな」


空から着地し、ボロボロになったスーツの埃を払う。

その時、目の前の空間がグニャリと歪み、青白く光る巨大な「扉」が出現した。


ダンジョン・ゲート。この空間のボス(俺が最初に喰ったレベル9999の竜)が消滅したことで、帰還用のルートが開いたのだ。


「さてと。とりあえず、帰るか」


俺はネクタイを緩めながら、光の扉へと足を踏み入れた。


 ◇ ◇ ◇

同じ頃。

現実世界――東京・新宿区。


ゲートが出現した大通りの交差点は、阿鼻叫喚のパニックに包まれていた。


「全隊、武器を構えろ! 絶対に防衛線を抜かせるな!!」


「ダメです! ゲートの魔力数値が測定不能エラーを吐いています! S級……いや、神話級のオーバーフロー(溢れ出し)が起きます!!」


何重にも張られた非常線の内側。装甲車と重火器を構えた自衛隊員、そして急行した探索者協会のエリートたちが、絶望的な表情で巨大なゲートを睨みつけていた。


その最前線には、日本に8人しかいない『S級探索者』の1人も駆けつけていたが、彼の顔にも滝のような冷や汗が流れている。


「クソッ、こんな規模のゲート、前代未聞だぞ……! いったいどんな化け物が出てくるって言うんだ……ッ!?」


S級探索者が大剣を強く握りしめた、その時。

カツン……カツン……。


静まり返った交差点に、ゲートの奥から「足音」が響いた。


全員が息を呑み、トリガーに指をかける。

最強の化け物が、来る。人類の危機が、そこまで迫って――。


「あー……」


光の中から現れたのは、土埃にまみれ、あちこちが破れた安物のスーツを着た、一人の冴えないサラリーマンだった。


手には、ひしゃげたビジネスバッグ。


「すいません、ちょっと通してもらっていいですか? 明日も朝から仕事なもんで」


「「「…………は?」」」


何百という銃口と、最強の探索者たちの殺気を向けられながら、そのサラリーマン(健人)はポリポリと頭を掻いた。


パリンッ……!!


次の瞬間、難攻不落と思われた巨大なイレギュラー・ゲートが、まるでガラスが割れるように粉々に砕け散り、消滅した。


それは、ダンジョンが『完全攻略』されたことを意味する絶対の証。


静寂。


自衛隊員も、協会幹部も、S級探索者も、ただポカンと口を開けてその男を見つめている。


「(……とりあえず、このバグったステータスカード、協会で更新しなきゃな)」


唖然とする群衆のど真ん中で、健人は「帰ってビール飲もう」とでも言いたげな顔で、大きな欠伸をしたのだった。



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