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60点だった俺のカンスト人生〜底辺レベル1のアラサー社畜、超難関ゲートに落ちて神竜を簒奪(オーバーライト)したら世界最強になっていた〜  作者: kiro


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迷宮の主の罠と、変わってしまった間取り



氷の要塞と化した札幌支社ビルの内部は、元の面影を完全に失っていた。


大理石の床は分厚い永久凍土に覆われ、壁からは巨大な氷の牙が幾重にも生え揃っている。


「……なぁ天羽さん。そのクソ不法占拠者ダンジョンマスター。他人の会社のビルを勝手にリフォームして、ドヤ顔で居座ってるってことだよな?」


凍てつく廊下を歩きながら、健人がビジネスバッグを肩に担ぎ直して尋ねた。


「ああ。奴らは自らの領域の構造すら自在に書き換える。油断するな、どこに罠が……」


天羽が警告を発した、その時だった。


『――ピピッ。侵入者イレギュラーノ分断ヲ開始シマス』


どこからか、機械音に似た無機質な声が頭の中に直接響いた。

直後。


ズゴゴゴゴゴォォォォォンッ!!!


猛烈な地響きと共に、健人たちの立っていた氷の廊下が、まるでルービックキューブのように『回転』を始めたのだ。


「なっ!? 空間が、捻じ曲がって……っ!」

「床が割れるぞ! 散開しろ!!」


天羽が叫ぶ。

ダンジョンマスターによる、空間構造の強制書き換え(トラップ)。


健人と天羽の間に巨大な氷の壁がせり上がり、床がスライドして、一つの部隊を完全に二つの空間へと分断してしまった。


「朝倉!!」


「天羽さん! ……チッ、見えなくなったか」


氷の壁が完全に閉ざされ、健人と天羽たちは物理的に切り離された。


 ◇ ◇ ◇

分断された氷の広間。


天羽と『天刃』のエリート部隊十数名は、即座に円陣を組んで武器を構えた。


『ギシャァァァァッ!!』


壁の四方から這い出してきたのは、数十体の【レベル1000:絶氷の暗殺獣アサシン・ビースト】。さらに、上空には遠距離魔法をチャージしている飛行型のモンスターが隙間なく陣取っていた。


「……クソが。見事な伏兵アンブッシュだ。俺たちの足止めか、それとも削り殺す気か」


天羽はギリッと奥歯を噛み締めた。

完全に計算され尽くした、知性による『殺しの配置』。


「全員、死ぬ気で凌げ!! 陣形を崩すな!」


天羽は刀を抜き放ち、ダンジョンマスターの悪意に満ちた軍隊との、絶望的な死闘へと突入していった。


 ◇ ◇ ◇


一方、分断されたもう一つの空間。

健人、しずく、そしてクロの『1人と1匹と1人』は、見知らぬ氷の小部屋にポツンと取り残されていた。


「あ、朝倉さん……! 分断されちゃいましたよ!? 天羽さんたち、大丈夫でしょうか……!」


しずくが杖を握りしめてパニックになっている。


「まあ、あっちは日本トップのS級ギルドだ。心配はいらないだろ。それよりも……」


健人はビジネスバッグを足元に置き、氷に覆われた周囲の壁をジロジロと見渡した。

そして、チッと舌打ちをする。


「勝手に会社のフロアマップをいじりやがって。これじゃあ、地下3階のサーバー室への行き方がわからなくなったじゃないか」


健人は眉間に皺を寄せ、ひどく苛立っていた。

サラリーマンにとって、慣れない出張先で迷子になることほどタイムロス(残業の元)はない。


「えっと、朝倉さん? ここはダンジョンになったので、もうエレベーターも階段もないですよ? どうやって地下に……」


「道がないなら、作ればいいだけだ」

健人はネクタイを緩め、ワイシャツの袖をまくり上げた。


そして、『見えない空間のグローブ』を纏った右拳を、自分の足元の分厚い氷の床(大理石)に向けて、真っ直ぐに振り下ろした。


「地下3階まで、直通エレベーターの開通だ」


――ドゴォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!


鼓膜が破れるような轟音と共に。

健人の拳の空間圧縮が、レベル数千のモンスターすら防ぐはずの『ダンジョンマスターが構築した絶対の迷宮構造』を、床から地下の奥深くに向かって、物理的に(・・・・)何十層もぶち抜いたのだった。


「ひぃぃぃっ!?」


しずくの悲鳴と共に、健人たちは自ら作った大穴を通って、一気にビルの深層へと落下していく。


高度な知性で完璧な迷路と罠を構築したダンジョンマスターは、この時、初めてシステム画面のエラー通知を見て「……ハ?」と宇宙猫のような顔になっていたに違いない。

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