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60点だった俺のカンスト人生〜底辺レベル1のアラサー社畜、超難関ゲートに落ちて神竜を簒奪(オーバーライト)したら世界最強になっていた〜  作者: kiro


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迷宮の主(マスター)の存在と、ひび割れた上限の壁


猛吹雪が吹き荒れる札幌市街地。


S級第2位【剣聖】天羽蓮は、渡されたシワシワの名刺と、目の前で微笑むサラリーマンを交互に見つめ、完全にフリーズしていた。


「……第2営業部、主任。朝倉……」


「はい。以後お見知りおきを。それで、ウチの札幌支社の場所なんですが」


健人が指差す先。そこは、今回のダンジョンブレイクの中心地であり、最も濃密な魔力(瘴気)が渦巻いている巨大な氷の要塞だった。


「……あそこだ」


天羽は深くため息をつき、刀を鞘に納めた。もはや目の前の男を疑う気にもなれなかった。レベル2200をワンパンで消し飛ばす圧倒的な事実の前に、常識など何の意味もない。


「お前の探しているビルは、ダンジョンの『コア』に飲み込まれて、あの要塞の最深部と同化している。中心部の魔力濃度は計測器が完全にバグるほどの異常値だ。あのレベル2200のような未知のバケモノが、中でどれだけポップしているか全く予測がつかない」


「マジですか。俺のボーナス(サーバー)が壊れる前に急がないと」 


健人が舌打ちをした時、重傷を負って倒れていたS級第5位・東郷が、救護班の治療を受けながら呻き声を上げた。


「……ゴホッ……天羽、気をつけろ……。さっきのバケモノは、自然発生したイレギュラーじゃねえ……」


「東郷のジジイ、喋るな。どういう意味だ?」


「あいつの眼だ……。あんな巨大な獣が、俺の防御の『一番脆い結節点』を正確に狙ってきやがった。……まるで、高度な知性を持った誰かに『命令』されているようにな」


東郷の言葉に、天羽の部下たちが青ざめる。

天羽はギリッと奥歯を噛み締め、忌々しそうに吐き捨てた。


「ダンジョンマスター級……歴史上の推論ファンタジーでしかなかった存在が、本当に実在するっていうのか」


「マスター級?」


健人が首を傾げると、天羽は険しい顔で振り返った。


「通常のモンスターは本能で動く野生動物だ。だが、マスター級は違う。ダンジョンの核をハッキングし、システムを操作できる『極めて高い知性を持った管理者』だ。万単位のモンスターを軍隊のように統率し、陣形を組み、こちらの弱点を突くように突然変異体ミュータントを意図的にポップさせる……。もしそいつが奥で糸を引いているなら、ここは既に、奴の『胃袋の中』だ」 


「なるほど。ただの野生のヒグマじゃなくて、完全武装したテロリストの司令官ってわけか」


健人が納得したように頷く。見えない司令官が、カメラ越しに自分たちを観察し、殺すための完璧な盤面を整えている。その不気味な想像が、極寒の空気をさらに冷たくさせた。


「朝倉」


天羽は、かつてないほど真剣な顔で頭を下げた。


「俺のギルドに手を貸せ。お前のそのデタラメな力で、道を切り拓いてほしい。その代わり、お前の探している金庫室までの案内と……この事態を解決した後の『マスコミや政府への面倒な説明』は、全て俺が責任を持ってもみ消してやる」


「……ほう」


健人の目が、怪しく光った。


S級探索者が頭を下げるという事実よりも、「面倒な後処理(NDA)を全部やってくれる」という提案が、サラリーマンの心に深く刺さったのだ。


「いいでしょう。お互いの利益が一致しましたね。ではこれより、朝倉とギルド『天刃』との間で、臨時の『業務提携』を結ばせていただきます」


「……行くぞ、お前ら!」


天羽が部下たちに号令をかける。

いざ出陣とばかりに歩き出した健人の背中を見つめながら、天羽は自身の右手をギュッと握りしめていた。


(未知のレベル2200を、一撃……)


天羽の視界の端には、自身のステータス画面が映っている。


【レベル:999(上限)】


「システムが定めた人類の限界」。天羽はずっと、それが世界の絶対の理だと思っていた。


だが、システムのレベルを完全に無視して空間を抉り取った健人を見た瞬間、天羽の胸の奥で、カチン、と何かが弾ける音がした。


絶対だと思っていた壁は、ただシステムが勝手に用意しただけの『フェイクの檻』に過ぎないのではないか?


天羽の腰にある日本刀が、主の静かなる高揚に呼応するように、微かにカタカタと鳴った。


「……面白い。俺の剣は、まだ先へ行ける(・・・・・・)のか」


天羽は自身の『上限』という概念にヒビが入ったのを感じながら、氷の要塞へと踏み出した。


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